2023-11-14から1日間の記事一覧

長城のかげ《下》 宮城谷昌光

2010年11月20日発行 風の消長 劉肥は、後年、父の劉邦が竹の皮の冠を頭につけ、微風にむかって手をひろげ、「どうだ、皇帝のようだろう」と豊かな声を放った情景を繰り返し憶い出した。劉肥の目には、実際、父が皇帝のように美しくみえた。父が泗水亭の長に…

長城のかげ《上》 宮城谷昌光

2010年11月20日発行 逃げる 季布は四面から楚の歌が湧き上がってくるのはなぜであろうと不思議に思った。黥布だけでなく、周殷までもが裏切った。季布は項羽が生きつづければ必ず天下を平定し、帝位にのぼれると信じていた。その項羽が突然李布に逃げると伝…