終わらざる夏〈中〉 浅田次郎

2010年7月10日第1刷発行

 

裏表紙「片岡の一人息子・譲は、信州の集団疎開先で父親の召集を知る。譲は疎開先を抜け出し、同じ国民学校六年の静代とともに、東京を目指してただひたすらに歩き始めた。一方、片岡ら補充要員は、千島列島最東端の占守島へと向かう。美しい花々の咲き乱れるその孤島に残されていたのは、無傷の帝国陸軍、最精鋭部隊だった。―否応なく戦争に巻き込まれていく人々の姿を描く著者渾身の戦争文学、中編。」

 

  片岡の息子譲は、疎開先で庫裏に忍び込んで供物の饅頭と干菓子を進んだ級友の罪を被った。嘘はいけないと訓導に諭されても級友を最後まで庇った。後で犯人は訓導に名乗り出てきた。訓導はしっかり者だと思った譲に家からの手紙を読ませた。父が召集された譲は疎開先から東京に向かった。途中で逃げ出した近所の上級生の吉岡静代と一緒になった。「シュムシュ」の名のいわれはクリルアイヌ語の「シーモリシリ」が訛ったものだと伝えられる。意味は「美しき島」「親なる島」である。カムチャッカ半島とは僅か12キロしか離れていない。久子は譲と一緒にいる静代の家を探すのに必死だった(第三章)。

 色丹島で菊池は診療所に寄った。鬼熊は戦陣訓を語ってもらいたいと依頼され、悲惨な戦争体験を話した。占守島に日魯漁業の缶詰工場があり、400名の女子挺身隊を含む2500人の民間人が送り込まれた。(第四章)。

 色丹を出港した3人は占守島に無事到着した。方面軍参謀𠮷江少佐が出迎えた。譲と静代は浅間山、軽井沢を通っていた(第五章)。