新装版 日本風景論 志賀重昂

2014年2月10日第1刷発行

 

帯封「水蒸気、火山、流水‥が作り上げた 美なるかな、この国土。登山を推奨し、景観保護を訴え、文化風土を讃える。明治の大ベストセラーにしてクラシックである!」「登山の気風を興作すべし」「志賀重昂は一介の旅行者としてすでに日本の山川を驚嘆すべき精力で跋渉し、地理学的に観察し、それを情念をうちに秘めた文章によって次々と論述し、その地に関係ある日本文学の古典のなかの叙述例をこれまた豊かに挿入し、また樋畑雪湖、海老名明四の実景描写を加えて、…内容、形式ともに完璧ともいうべき刊行物であった…(『解説』土方定一

裏表紙「地理学者・国粋保存主義者である志賀重昂は、日本を地理学的に最初に紹介した。科学的・実証的な論述でありながら、日本文学の古典を豊富に引用し、詩情豊かに自然美を讃える。近代日本登山の嚆矢の書でもある。明治画壇の名手、樋畑雪湖・海老名明四の俊逸なる挿画も多数掲載。日本人の景観意識に決定的変革を与えた記念碑的著作は、今なお新しい。」

 

目次

一 緒論

二 日本には気候、海流の多変多様なる事

三 日本には水蒸気の多量なること

四 日本には火山岩の多々なる事

付録 登山の気風を興作すべし

五 日本には流水の浸食激烈なる事

六 日本の文人、詞客、画師、彫刻家、風懐の高士に寄語す

七 日本風景の保護

八 アジア大陸地質の研鑽、日本の地学家に寄語す

九 雑感(花鳥、風月、山川、湖海の詞画について)

解説 土方定一

 

味わうべき良書の1冊である。巻末の解説に、小島鳥水が志賀重昂の文章を「理を尽くした欧文素と、簡潔勁抜な漢文脈が、よく融和している。しかも嫋々ともいうべき余韻が、漂っている。漢文脈といっても、破墨山水でなく、欧文素といっても油絵のこってりではない、謂わば水彩画の軽快なる筆触と明朗なる色沢である。当時の文壇において、柴四朗(東海散士)徳富猪一郎(蘇峰)志賀重昂は、三大文章家として並称されていた」といわれている通りである、と指摘されているが、見事な漢文調を基調とした美文である。