岡本かの子 1889-1939 ちくま日本文学037

2009年7月10日 第1刷発行

 

老妓抄

 年々にわが悲しみは深くして いよよ華やぐいのちなりけり

 

 解説をする工藤美代子によると、色っぽい小説を書く、おばちゃんだと昔は思っていたが、思い込みの強い虚構の世界を持ち続けてそれを放さなかった握力の強さに、このモンスターのような女流作家の個性が現れているらしい。

 なぜ老妓が成年の面倒をこれほどまでに良く見るのか分かったような分からないような気がするが、最後に和歌が掲げられたのを読んで、うーん、そういうことなのかなあと少しだけ頷いた。著者は、岡本太郎のお母さんであるらしい。