フリーダ・カーロ 悲劇と情熱に生きた芸術家の生涯 筑摩書房編集部

2015年10月25日 初版第1刷発行

 

巻末エッセイを書いた森村泰昌さんによると、無痛の時代である現代に対して、それでいいんですかと警鐘を鳴らしているのかもしれない、とあった。

最初、掲載されている絵画だけを眺めていた時は、この画家の絵はシュールではないのかな、と思ったけれど、私の現実を描いたとフリーダ本人が言っているのは、本人が小児麻痺や交通事故、そして夫のディエゴによる度重なる裏切りによって心も体も傷つき、絵を描くことでしか幸せの時を刻むことができなかったからに由来している、というのが本書を読んでよく理解できた。そもそもフリーダのことも、夫のディエゴのことも、この本を読むまでほとんど知らなかった。青壁の家の存在も。それでも最後の最後まで書くことに命を燃やし続けたフリーダ。最後は、脊柱がバキバキになって起き上がることもできなくなり、47歳の若さで亡くなったのは惜しまれるけれど、でも眉をつなげた絵画から伺われる意思の強さと、また優しさとを併せ持つ、今世紀の偉大な画家の1人であることは間違いなさそうです。心の内部を絵として表に現わす、そんなことは到底私にはできないことですが、画家というのはそういうことを実現する、そういう芸術家なんだということを改めて教えてもらいました。