小公女 バーネット 訳 秋川久美子

2007年1月第1刷 2008年6月第3刷

 

裕福な家に生まれたセアラは、当初、ロンドンの寄宿学校でしあわせに暮らしていたのに、父の死をきっかけに屋根裏部屋で暮らすように。それでも優しさと気高さを失わない彼女に対し、寄宿学校の経営者であるミンチン先生は、そんなセアラの表情や態度が気に食わず、いじわるをする。

そんなとき、セアラは「心のなかで、こんなふうにつぶやていることを、ミンチン先生は知らなかった。『相手がプリンセスだってことをご存じないのね。私がこの手をひと振りするだけで、あなたを処刑することもできるのよ。でも、あなたを許してあげます。私はプリンセスなのだから』」と考えて、面白がっていた。そしていつも礼儀正しく堂々としていた。

そんなセアラを、いつしか父の親友が事業で成功して、その娘だとは知らずにセアラを応援するようになり、遂にはその姿をセアラの前に現わすことに。そしてセアラと話をするうちに、実はセアラが親友の娘であることが分かり、そんな劇的な場面にミンチン先生が登場し、そうとは知らずにセアラにいつものように厳しく当たる。ところが、亡くなった父の、失ったと思っていた財産が実は無くなっておらず莫大なものになってセアラが引き継ぐことになると知った瞬間、ミンチン先生の態度は急変し、今まで辛く当たってきたけど、本当は好きだったなどと、散々意地悪をしてきたのを棚に置いて、セアラの財産に少しでもありつこうと、いやらしい大人の顔を思い切り見せはじめる。そんなミンチン先生にセアラは、「私は、プリンセス以外のものにはなるまいと思っていました」「どんなに寒くても、ひもじくてもーいつもプリンセスでいようと思っていました」という。人間としての格、品格というか、人格というか、レベルがそもそも違っていた。

そして最後に、セアラは自分が困っていた時に助けてくれたパン屋のおかみさんを訪ね、お腹を空かせた子どもたちに、自分にしてくれたようにパンを与えて欲しいとお願いし、請求書は自分に回してとお願いする。

 

人は、小さい時から、できれば、心を美しく保ち、貧しい時であろうと裕福になった時であろうと、人品骨柄は変えてはいけないよということを分かり易く、反対に大人になったら、相手の立場如何で態度を豹変するような醜い姿をさらしてはいけないよということを、鮮やかなコントラストをつけて教えてくれる、名作中の名作でした。

やはり名作はたくさん読むべきですね。小さい頃にこそ、あるいは若い頃にこそ、名作に親しむべきです、と言われるゆえんがよく分かります。