星の王子さま サン=テグジュペリ 訳 谷川かおる

2006年7月第1刷 2014年5月第14刷

 

ずっと子ども向けの本だと思っていたが、改めて読み直してみると、いや、これは大人に向けて書かれた本だ。大人になって、ずっと忘れてしまっていた大事なもの。それを子どもの目線に立って書いている。だから子どものうちに読んでいたとしても、すっかり大人になって忘れてしまっているのだから、まさしく大人が読むべき本なのだ。

王子さまに語りかけるキツネの次の言葉。

「さあ、オイラの秘密を教えよう。すごく単純なことなんだ。それは、心でしかものはよく見えないってことだよ。いちばんたいせつなものは、目には見えないんだ」

「いちばん大切なものは、目には見えない」と、王子さまはキツネの言葉を繰り返した。よく覚えておけるように。

このシーンは、とっても象徴的。

 

王子さまと主人公との別れの場面も印象的。

「あなたは来ちゃいけなかったんだ。つらい思いをするよ。ほくは死んでしまったように見えるだろうから。それはほんとうじゃないんだけど・・・」

主人公はただだまっている。

「ねえ、わかっているでしょ。ぼくんとこ、すごく遠いんだ。ぼく、このからだを持っていけないんだ。重すぎるもの」

命というのか霊魂というのか、星の王子さまが「じっと立っていた。叫び声もたてなかった。そしてゆっくりと、樹が倒れ落ちるように、倒れた。砂のせいで、倒れる音さえしなかった」

 

そして最後に

「でも、おとなたちは、それがそんなにも重大な問題だっていうことを、ぜんぜん理解できないだろう!」

で締めくくられている。

 

子どものころに素朴に思った疑問・素敵な感想。心が清いからこそ感じるいろんなまばゆいばかりの光景。すっかり忙しい日常生活の中でそんなこともすっかり忘れている大人たち。

であるが故に、この本は、まさしく大人が読み返すべき本なのだ。