行動経済学 経済は「感情」で動いている 友野典男

2006年5月20日初版第1刷発行

 

帯封に「ノーベル経済学賞を受賞した、経済学を超えた経済学 その誕生から最前線まで」

目次

はじめに

おわりに

 

長年積読状態になっていた。

プロスペクト理論自体は耳にしたけれど、時間が経つと、スグに忘れてしまう。

本書は、2002年にノーベル経済学賞プリンストン大学ダニエル・カーネマン教授による「行動経済学」の入門書として書かれている。「勘定」から「感情」へ。

経済学と心理学を融合した、現在進行形の学問のようだ。

 

改めて表紙裏に「超合理的な経済人を扱う経済学は、どこか現実にそぐわない」「感情、直感、記憶など、心のはたらきを重視し、私たちの現実により即した経済学を再構築しようとする新しい学問、『行動経済学』の基礎を、詳しく解説」とあったとおり、比較的分かり易く書いてあります。でも、途中で、「価値関数」やら「確率加重関数」やら数式がちょこちょこ登場してくるので、そのあたりは飛ばし読みです。

 

まあ、それでも、価値は参照点との比較で測られるという①参照点依存性(病気になってはじめて健康のありがたさがわかる、という言葉で理解が一気に深まった)、利得・損失は値が小さいうちは変化に敏感だがその値が大きくなるにつれて変化の感応度は減少するという②感応度逓減性、損失は同額の利得よりも強く評価されるという③損失回避性ということをプロスペクト理論の(1)で説明してくれているあたりは、フムフムといった感じで読み進められます。

 

そして③について「保有効果」「現状維持バイアス」あたりを(2)で説明してくれていますが、これも比較的容易に理解できるよう書かれています。

 

(3)では、フレーミング効果、要は、同じ内容を見ても(コップ半分の水)、一杯だった水が半分残っているとみる人も、カラだったが今は半分満たされていると見る人もいるわけで、質問や問題の提示のされ方によって人の意思決定が影響されるということを説明してくれている。

 その中で、従来はサンクコスト(過去に払ったものは取り戻せない)は計算してはいけないとする従来の考え方に対し、いやいや実際には“だから取り戻さなくっちゃ“という影響があるのを無視できないでしょう、というのも説得的に感じる。

 選択肢の数も、多ければいいというものではない、という選択のパラドックスにも触れている。

 

そんなわけで、行動経済学の本は、初めて読んだのですが、入門書としては、結構、うってつけのように思いました。