15歳の寺子屋 ひとり遊びのススメ 茂木健一郎

2010年6月28日 第1刷発行

 

チョウを追いかけ続けた小学校時代。ゴマダラチョウを捕るのに1週間森に通い続けた。子どもの頃に読んだ本で思い出すのは『だれも知らない小さな国』(佐藤まさるさんの童話)と『なぜなぜ理科学習漫画』全セット。そしてアインシュタインの伝記。小学校を卒業するまでにスタンダールバルザックの小説、アレクサンドル・ソルジェニーツインの『イワン・デニーソヴィチの一日』やトルストイの『イワンの馬鹿』等を読み、中学に入ると、レオポルト・インフェルト『アインシュタインの世界―物理学の革命』などを読む。そのほかにも夏目漱石の小説、小林秀雄の随筆、エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』やマルクスとの共著『共産党宣言』、『赤毛のアン』全8巻。スポ根に目覚めたり、生徒会長選挙で伝えたいことを伝えられたら予期に反して当選した経験から「誠意は伝わる」といった経験も語っている。

高校時代は畏友・和仁陽さんと知り合う。エリザベス1世の伝記を洋書で読む彼が「受験勉強で忙しいから時にはこんな本を読んでいないと精神のバランスが保てない」と。海外文通を始めたり、カナダでホームステイを経験したり、英語にも挑戦。「これは信じるに足るー直観的にそう思えるものにつき進む」という著者の進んできた道が赤裸々に紹介されています。

セレンデイピティ(偶然に出会う幸運)を逃さず自分のものにするためには「受容」すなわち受け入れることが最も大切。今までの世界観で片づけてしまうのか、自己変容のプロセスとして身をゆだねるのか。ここが大きな分岐点。内なる自分との対話。それが表題の「ひとり遊びのススメ」に繋がっている。文系と理系に分ける考え方は不要かつ有害と言い切る著者。便宜上の区分で知的探究心を限ることは自らの可能性を封殺してしまうことに等しいからと。東京大学理学部物理学科卒業後、法学部へ学士入学し大学院は再び物理学を選んで科学的な心理を探究する著者ならではの発想も語られている。

好奇心旺盛な、頭のいい人なんだろうなあと思う。