パストゥール 微生物の研究により、はじめて伝染病の原因をつきとめたフランスの科学者 ビバリー・バーチ 訳/菊島伊久栄

1992年1月1刷 1996年1月5刷

 

自然発生説は誤っており、微生物である細菌は空気中のほこりなどに運ばれていろいろなもの(物体や液体)へ入り込むことを証明したパストゥール。微生物がほかの多くの物質に発酵を起こすことを明らかにしただけでなく、熱で殺すことによって腐敗から守る方法も開発。低温殺菌法はパストゥールの名をとってパスチュアライゼーションと言われるらしい。ところが46歳で脳出血の発作を起こして左半身がマヒ状態に。それでも夫人や助手の助けを借りて研究を続け、ドイツのコッホがたんそ病菌を発見して特定の細菌が特定の病気を引き起こすことを発見するのとほぼ同じ時期に、パストゥールはニワトリコレラ菌の研究から弱くなった病原菌を使って免疫がつくれることを発見する。たんそ菌のワクチンの開発、狂犬病のワクチンの開発など、免疫学の大きな道を作った。

 

このような功績は人類全体に対する功績と言ってよいでしょう。多額の寄付が集まり、パストゥール研究所を設立し、優秀な弟子を多数輩出。ジフテリアの毒素を取り出したのはパストゥール研究所、破傷風の毒素はコッホの研究所で。痘瘡、結核、黄熱病、狂犬病、ポリオ、コレラ、はしか、腸チフス、百日咳、風疹、インフルエンザ、コレラなどに対するワクチンが次々に開発されていったのは元をたどればパストゥール。パストゥール研究所はエイズウイスも発見した。20世紀にはペニシリンをはじめとする抗生物質も開発された。

 

20歳前後に妹に宛てた手紙には「意志は輝かしくもあり幸福でもある成功への扉を開き、仕事はその扉を通り、旅路の終わりには、成功がその努力に王冠を戴かせにやってくる」と書いて励ましたエピソードが解説(医学史研究会幹事 秋元寿恵夫)に紹介されていましたが、その言葉がそのまま本人に当てはまるような一生でした。