世界を変えた書物 山本貴光著 橋本麻里編

1 古代の知の伝承

0101 イシドールス 『語源』 

知識を集め編むことの大いなる意味を体現した中世の百科事典

  0102 エウクレイデス 『原論』

   ユークリッド。証明のお手本を示し続けた古代ギリシア数学書

  0103 アニキウス・マンリウス・セウェリヌス・ポエティウス 『算術教程』

知の基礎ツールをつくり後世へ中継する

  0104 アリストテレス 『ギリシア語による全集』

   翻訳ではなく元の言語で読めるようにと企画された全集

  0105 ヨルダヌス・ネモラリウス 『算術十書』

   『原論』をお手本に算術を体系化

  0106 レギオモンタヌス『プトレマイオスの「アルマゲスト」のヨハネス・レギオモンタヌスによる要約』

   古代の精緻な天動説宇宙論を要約で甦らせる

  0107 アルキメデス 『方形化、すなわちこの上なく数学への洞察力に富むカンパヌス、シェラクサイのアルキメデス、ポエティウスによる発見である円の求積法』

   古代の数学的遺産をアンソロジーで伝える

  0108 アポロニウス 『卓越せる哲学者にして数学者の著作集』

   曲線の研究が天文に及ぶ

  0109 アルキメデス 『卓越せる哲学者にして幾何学者であるシュラクサイのアルキメデスの著作集』 

   書物にまとめれば、アルキメデスの全体像を一望できる

2 ニュートン宇宙

  0201 ニコラウス・コペルニクス 『天球回転論』

   古代以来の天動説を覆す

  0202 ヨハネス・ケプラー 『新天文学

「惑星は真円運動」という常識に代わる新たな宇宙像を示す

  0203 ガリレオ・ガリレイ 『星界の報告』

   望遠鏡から見える宇宙を未経験の人びとに伝える

  0204 ガリレオ・ガリレイ 『世界二大体系についての対話』

   天動説と地動説を真っ向から戦わせる対話篇

  0205 アイザック・ニュートン 『自然哲学の数学的原理(プリンキピア)』

   宇宙万有の動きを数学で証明する

  0207 ヨハネス・ケプラー 『宇宙の調和』

   森羅万象を貫く調和に耳を澄ませる

3 解析幾何学

  0301 ジローラモカルダーノ 『代数学の規則についての大いなる術』

   秘伝の術を整理・発展して公開

  0302 ジョン・ネイピア 『驚くべき対数法則の記述』

   「天文学の寿命を倍にした」と言われる数学の発見

  0303 ルネ・デカルト 『方法序説

   諸学問の基礎をなす確実な知に至るための方法

  0304 ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ 『分数式にも無理式にも煩わされない極大・極小ならびに接線を求める新しい方法、またそれらのための特殊な計算法』 

微分法と使いやすい表記を提案

  0305 レオンハルト・オイラー 『無限解析入門』

   関数の概念で解析学を再編成

4 力・重さ

  0401 ニッコロ・タルターリア 『新科学』

   数学の理論を大砲の弾道計算という実践へ応用

  0402 ヨルダヌス・ネモラリウス 『タルターリアの研究によって正された重さについての書』 

中世の「重さの学」を後世に伝える

  0403 シモン・ステヴィン 『計量法原論』

   知られざる万能の人による重さの学

0404 ガリレオ・ガリレイ 『新科学対話』

 数学と実験を通じて近代物理学を切り拓く

0405 クリスティアンホイヘンス 『振子時計、あるいは時計に応用された振子の運動についての幾何学的証明』

 正確な時を刻む機械を求めて

5 光・色彩

  0501 アル=ハゼン 『光学宝典』

   ヨーロッパに大きな影響を与えたイスラームの視学・光学書

0502 ヨハネス・ケプラー 『天文学の光学的部分を扱うウィテロへの補遺』

 光学と視覚の理論をアップデートする

0503 クリスティアンホイヘンス 『光についての論考』

 光を波動と見なして、その性質を説く

0504 アイザック・ニュートン 『光学 光の反射、屈折、回折、色についての論考』 実験と観察に基づいて体系化された17世紀光学の最高到達点

0505 トーマス・ヤング 『光と色の理論について』

 光の波動説の基礎を築く

  0506 トーマス・ヤング 『自然哲学及び機械技術に関する講義』全2巻

   真の博識が示された講義録と驚くべき文献カタログ

  0507 ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ 『色彩論』

   人間不在の光学を全力で批判する論争の書

  0508 ロバート・フック 『ミクログラフィア』

   ミクロの世界の探検報告

  0509 ウィテロ 『数学者ウィテロによる視学』

   古代の数学、イスラームの光学を総合した教科書

6 物質・元素

  0601 ヒエロニムス・ブルンシュヴィヒ 『単一素材の蒸留技法書』

   蒸留法と薬草の総合図解カタログ

0602 ゲオルギウス・アグリコラ 『金属について(デ・レ・メタリカ)』

 鉱山をめぐる百学連環の集大成

0603 ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタ 『蒸留法九書』

 魔術から科学へ向かうルネサンスの蒸留書

0604 ロバート・ボイル 『懐疑的化学者』

影響力ある古代・中世の物質管に疑義をつきつける

0605・0606 アントワーヌ=ローラン・ド・ラヴォアジエ『化学原論』全2巻

 近代化学への基礎を築いた化学革命の書

0607 ハンフリー・デーヴィ 『化学哲学原論』第1部第1巻

 電気化学による新元素の発見で化学体形をアップデート

7 電気・磁気

0701 ジャン・テニエ 『磁石の本性とその効果について一生の記憶に値する小品』

 知識の中継点としての書物(よく言えば)

0702 ウィリアム・ギルバート 『磁石、磁性体、そして大磁石としての地球について、多くの論述と実験で論証された新哲学(磁石論)』

 磁気と電気を明確に区別した新哲学の書

0703 オットー・フォン・ゲーリケ『真空についての(いわゆる)マクデブルクの新実験』 

 市長は天文学と実験がお好き

0704 ベンジャミン・フランクリン 『フィラデルフィアにおける電気に関する実験と観察』

 独学で電気学の最前線へ

0705 シャルル=オーギュスタン・ド・クーロン 『電気と磁気についての研究論集』

 電気と磁気の性質を定量的に確定する

0706 ルイージ・ガブヴァーニ 『筋肉運動における電気の諸作用についての注釈』

 偶然を捉えて生物と電気の関係を探る

0707 アレッサンドロ・ヴォルタ 『異種の導体の単なる接触により起こる電気』

 生物電話を梃子にして人工電気を発明

0708 アンドレ=マリ・アンベール 『二種の電流の相互作用についての論集』

 電気の流れを計測し、電気力学を拓く

0709 ゲオルグジーモン・オーム 『ガルヴァーニ回路の数学的な扱い』

 電気の減少を数学で法則にまとめる

0710 マイケル・ファラデー 『電気の実験研究』全3巻

 実験と研究による発見を市民とも共有する

0711 トーマス・アルヴァ・エディソン 『ダイナモ発電機・特許明細書、特許番号No.297,587』

 街に伝統をともすシステムのためにダイナモも改良発明

8 無線・電話

  0801 アレクサンダー・グラハム・ベル 『電話の研究』

   電気と音声を変換する

0802 ハインリヒ・ルドルフ・ヘルツ 『非常に速い電気的振動について』

 目に見えない電磁波を実験でつかまえる

0803 グリエルモ・マルコーニ 『無線通信』

 実験で確認された電磁波を無線通信に実用化

9 飛行

  0901 フランチェスコ・ラナ・デ・テルツィ 『前触れ、あるいは偉大な技術によって約束された新発明の事例』

   発明家の奇想天外アイデア

0902 バルテルミー・フォジャ・ド・サン=フォン 『モンゴルフィエ兄弟の気球体験記』 

 出現したばかりの飛行術についての実用書

0903 ダニエル・ベルヌーイ 『流体力学

 ニュートン力学微積分学を活用して流体力学を確立

0904 オットー・リリエンタール 『飛行術の基礎となる鳥の飛翔』

 飛翔のための根本原理を鳥に探る

0905 ウィルバー・ライト 『航空実験』

 滑空から操縦へ

0906 ロバート・H・ゴダード 『液体燃料推進ロケットの開発』

 ものをどこまで高く打ち上げられるか

0907 アメリカ合衆国大統領調査委員会 『スペース・シャトル・チャレンジャー号の事故に関する大統領調査委員会報告』

 人間はどのようにして大事故が生じるまで問題を見過ごすのか

10 電磁場

1001 ジェイムズ・クラーク・マクスウェル 『電磁場の動力学的理論』

 電磁気の一般理論を完成する

1002 ヘンドリック・ローレンツ 『マクスウェルの電磁気理論と運動体への応用』 1003 ヘンドリック・ローレンツ 『運動物体の電気現象と光学現象に関する試論』

電磁気学を拡張し、空間と時間の収縮を論じる

1004 アルバート・A・マイケルソン&エドワード・W・モーリー 『地球と光エーテルの相対運動について』

 エーテルはあるのか、ないのか

1005 ルネ・デカルト 『哲学の原理』

 神が造った精巧な機械としての宇宙を説く

11 原子・核

1101 ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン 『新しい種類の放射能について』

 物体を透過するX線の思いがけない発見

1102 ピエール・キュリー&マリー・スクオォドフスカ・キュリー 『ピッチブレンドに含まれる新放射性物質について』

 未知の放射性物質を見出す

1103 マックス・プランク 『正常スペクトルにおけるエネルギー分布の法則についての理論』

 それと知らずに量子論を準備する

1104 マリー・スクオォドフスカ・キュリー 『放射性物質の研究』

 放射線科学の基礎をつくる

1105 アントワヌ・アンリ・ベクレル 『物質の新しい性質の研究』

 未知の放射線を発見

1106 アーネスト・ラザフォード 『放射性変換』

 崩壊してゆく物質

1107 アーネスト・ラザフォード 『軽い原子とアルファ粒子の衝突』

 原子を壊すとどうなるか

1108 エルヴィン・シュレーディンガー 『波動力学についての四講』

 すべてを波として見る

1109 ロバート・A・ミリカン 『電子、陽子、光子、中性子および宇宙線

 見えないものをあぶりだす名実験家の素粒子論集

1110 アット―・ハーン&フリードリヒ・ヴィルヘルム・フリッツ・シュトラスマン 『低速中性子によるウランの核分裂について』

 核分裂の発見

1111 ヘンリー・スマイス 『アメリカ合衆国政府助成(1940-1945)のもとに行われた原子力の軍事目的利用開発の概要』

 なぜいかにして原子爆弾をつくったのか

1112 アメリカ合衆国戦略爆撃調査団 『広島、長崎に対する原子爆弾の効果』

 原子爆弾の効果と未来への想像

1113 湯川秀樹 『素粒子の相互作用について』

 陽子と中性子を媒介するもの(中間子)

1114 長岡半太郎 『線および帯スペクトルと放射能現場を示す粒子(電子)系の運動』 天体を参考に原子を考える

12 非ユークリッド幾何学

   1201・1202 ニコライ・イヴァノーヴィッチ・ロバチェフスキー 『幾何学の原理』 幾何学コペルニクス的転回

   1203 ボヤイ・ヤーノシュ 『〈附録〉完全に真である空間論の証明』

    非ユークリッド幾何学、もう一人の発見者

1204 ゲオルク・フリードリヒ・ベルンハルト・リーマン 『幾何学の基礎にある仮説について』

 幾何学を根本から革新する

1205 ヘルマン・ミンコフスキー 『空間と時間』

 相対性理論を四次元幾何学で洗練

13 アインシュタイン宇宙

   1301 アルベルト・アインシュタイン 『運動物体の電気力学について』

    時空間の見方に変革をもたらす

1302 アルベルト・アインシュタイン 『一般相対性理論の基礎』

 相対性理論を拡張して重力に迫る

14 量子論

1401 マックス・プランク 『熱輻射論に関する講義』

 量子論の第一歩を記す

1402 ヴェルナー・カール・ハイゼンベルク 『運動学的および力学的諸関係の量子論的再解釈について』

 量子力学を創始する

1403 ルイ・ヴィクトール・ド・ブロイ 『波動と運動/量子論研究』

 物質もまた波である

 

1404 ベルナー・カール・ハイゼンベルク 『量子論的な運動学及び力学の直観的内容について』

 不確定性原理

 

原典(各言語)では到底読むことは不可能だが、翻訳されたものを果たして生きているうちに何冊読むことができるだろうか?少しずつ挑戦してみよう。。。