黒人差別に対してたたかった、アメリカの偉大な非暴力主義の指導者 キング牧師 V.シュローデト 訳/松村佐和子  

 

1991年4月1刷 1996年4月7刷

 

キング牧師は、学生時代、神学者や哲学者の本を読み漁り、その中でも、奴隷廃止制度を訴えたヘンリー・ソローに感銘を受けている。その一つが1849年『公民としての不服従の義務について』で、人類にとって奴隷制度は許してはならないものであり、これに対しては強い態度でたたかわなくてはいけないと訴えていた。最も感銘を受けたのはマハトマ・ガンジーの考え方。有名なバスボイコット運動が起き、老婦人の一言が胸を打つ。「あたしは、自分のためにあるいているんじゃありません。子どもや孫のために

歩いているんです」キング牧師のプロポーズも恰好いい。「ぼくの妻になる人には、品性、知性、個性、美しさの4つをもとめている。きみには、それが全部そなわっている」ジョン・F・ケネディが大統領選でニクソンと闘っていた最中、キング牧師は、アトランタで座り込み抗議活動に参加した際に、他の学生たちと一緒に逮捕され、キング牧師1人が、4か月の懲役刑を命じる判決を言い渡され、刑務所送りに。これに対しケネディが自宅に電話をして妻コレッタに何とか助けて差し上げたいと伝えた数日後に判決が取り消される。ニクソン公民権の問題に口を閉ざしていたのと対照的。これにより黒人たちの多くがケネディに投票、勝利を収める。

 

「わたしは、この時代の最大の勝利は、・・心の中にあると思います。ほんとうの勝利は、この時代が黒人の精神にあたえた影響にあるのです。この時代のすばらしさは、われわれが誇りと自尊心を身につけたことにあります。この時代のすばらしさは、われわれが背筋をまっすぐに正したことです。どんな人も、背中がまがっていなければ、上にまたがって、おさえつけることはできないのです」(106頁)

 

「非暴力による運動は、すぐに抑圧者たちの心に変化をあたえたわけではありません。それよりもまず、運動にかかわった黒人たちの心と魂に影響をあたえました。黒人たちに、はじめて自尊心を持たせたのです。それは、今までかれらのなかに眠っていた力と勇気をふるいたたせました。そして、ついに、迫害者の側にも伝わって、良心を大きくゆさぶり、その結果、白人と黒人の和解が現実のものとなったのです」(同)

 

いずれも素晴らしい言葉です。

 

1963年ワシントン25万人大行進。そしてキング牧師の有名な演説が。原稿をわきにやって、心の感じるままに

話はじめた。

1964年7月、ノーベル平和賞受賞。ジョンソン大統領が公民権法にサインし、黒人が事実上ようやく投票できるように。