15歳の寺子屋 落語が教えてくれること 柳家花緑

2011年3月14日 第1刷発行

 

中学校時代(3年生)の通知表の写真をドーンと冒頭に丸ごと載せている!すごい勇気!本人が言うように確かに国語・社会・数学・理科・英語の、いわゆる主要科目が1・1・1・1・2となっている!落語家って頭のいい人がやるもんだと思っていたけど、これこそ学校の通知表=頭のいい人とは限らない、という事実を証明する、素晴らしい証拠!って感じです。痛快ですね。

 

5代目柳家小さん(落語家として初めて人間国宝になった)の孫というだけで、きっと恐らく相当不レッシャーがあったと思いますが、中学卒業と同時に祖父に弟子入り。戦後最年少で真打になったんだから、才能も本人の努力もあったに違いないと思います。何より、この本、とても分かり易いです。今の落語ブームが起きるより相当前の本だから、結構、柳家花緑、やるじゃん!っていう本です。

 

落語と言えば、人情噺やら、色々あるけれど、私は、内容はこれこそないような(!?)「千早ふる」が好きなんですね。誰もが一度は耳にしたことがある、在原業平が詠んだ「千早振る 神代も聞かず 竜田川 からくれないに 水くぐるとも」という歌。この意味を娘に聞かれた八五郎が答えられず、隠居に教わりにきた。その隠居の説明が素晴らしい!①「竜田川」=相撲取りの名前、②初めて行った吉原で「千早」太夫に一目ぼれするも「振られ」、③妹の「神代」太夫も口説いたが思い通りにならない、④竜田川は失恋の痛手から廃業し豆腐屋に。女乞食からおからを分けてと言われて顔を射たら「千早」太夫のなれの果て、お「からやれない」と言い、⑤突き飛ばされた千早が「井戸をくぐり」身を投げて死んでしまった、と説明しちゃう。

元の意味は、“紅葉でこんなにも美しく染まる竜田川、神代の時代にもなかったことだ”というものなのに、全くめちゃめちゃな話に。最後の「とは」と聞かれた御隠居は、「千早の本名だ」と。中身もなければ深みも何にもない。でも、面白い。ないないずくしの面白さ。これも落語の醍醐味の一つですよね。

 

勿論、甚五郎の「竹の水仙」とか、「死神」など、有名な噺もたくさん紹介してくれています。落語はこれまで聞くもんだと思っていたけれど、文字になったのを読むのも結構面白いですね。