ジャン・クリストフ(上)ロマン・ローラン 豊島与志雄・大蔵宏之訳

1966年12月初版発行 1987年10月第20刷発行

 

上巻は、あけぼの、朝、青年、反抗、広場の市まで。

あけぼの:大酒飲みの父にピアノの才能を見出されて特訓を受けるが、すぐに嫌になる。優しい母が印象的。 

朝:生活が困窮し、父の給料を自分が受け取ることにするも、それ自体に苦痛を感じる繊細さを持つ。 

青年:隣に住む未亡人ザビーネとの純愛。しかしザビーネは死んでしまう。アーダとの官能的な恋愛後に襲ったクリストフの精神の危機を、伯父のゴットフリートとの会話で立ち直る。「その日その日を愛するのだ。きょうのように、灰色で陰気な一日でも、それを愛するのだ。ごらん、今は冬だ。なにもかもが眠っている。しかし冬がすぎて春がくれば大地は目をさますだろう。この善良なる大地のように辛抱強くなるのだ」

反抗:クリストフの演奏会の歌手がクリストフの指示を聞かずに勝手に歌い出したためにやり直しをさせると聴衆はクリストフを非難する。ハムレットの切符を手にしたクリストフは劇場の近くでフランス人の女性を誘ってボックスで鑑賞するも途中で退席する。社会主義新聞社に論説を載せると、大公から追い出される。大音楽家ハスレルの冷たい態度に接し、ドイツを離れ、パリに亡命する。

広場の市:パリに着いたクリストフは旧友で記者・批評家のコーンの世話になり、自動車製造業の富豪の娘コレットにピアノを教える。青年詩人オリヴィエ・ジャンナンにも出会う。

 

ピアノの類まれなる才能に恵まれたクリストフは、ドイツのベートーベンがモデルだと何かで読んだことがあるが、ベートーベンの人生をそのまま小説にしたというものではない。が、音楽、中でもピアノへの独特のこだわりはベートーベンを彷彿させるような気もする。