特許やぶりの女王  弁理士・大鳳未来  南原詠

2022 年 1 月 21 日第 1 刷発行


2022 年第 20 回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
表紙裏には「特許権を盾に企業から巨額の賠償金をふんだくっていた凄腕の女性弁理士大鳳未来が、相方の弁護士と共に防衛専門の特許法律事務所を立ち上げた。今回のクライアントは、映像技術の特許権侵害を警告され、活動休止を迫られる人気 VTuber・天ノ川トリィ。調査に乗り出した未来は、さまざまな企業の思惑が絡んでいることに気づき、いちかばちかの秘策に‥‥」とある。
これは間違いなく映画になると思した。読みながらリーガル・ハイを思い出しました。主人公の女性弁理士が勝つためには手段を撰ばず、予想外の奇手とも言える方法で、相手の急所がどこにあるか想像をめぐらし、その急所を違法すれすれの手段で手に入れ、それを思いっきり活用して、嫌な相手をぶっ飛ばす。ぐうの音も出ない位に子気味よくハッタ押す。堺さんが演じた古美門研介弁護士と今回の大鳳弁理士が同じ人種に見えました。特許とライセンス契約、それに従業員の特許権を会社に帰属させるための特許の知識を散りばめて、読者に分かり易く説明しながら、自分の依頼者とその依頼者の元で希代の才能を発揮する天ノ川トリィを守る、という目的のために、自らの弱点がどこにあるのかについても徹底的に研究し(協力者に徹底的に研究させ)、その上でそれを上回る相手の弱点についても徹底的に調べ尽くして(ここが凄いところで古美門と同類だと思わせます)、難しい交渉を見事に成功させて、訴訟になる前に解決を図るという、この女性弁理士の手腕は拍手喝采ものです。

 一番の悪をあぶりだすために、少々現実離れした、一か八かの秘策に打って出て、見事に成功するあたりは、まるで映画のハッピーエンドを見ているよう。

 このシリーズはきっと続くと思います。次回作にも期待します。