エリオット詩集 田村隆一編

昭和42年5月30日初版発行 昭和51年10月5日7版発行

 

編者解説によると、エリオットの代表作『荒地』の第1部『死者の埋葬』冒頭の第1行、April is the cruellest month,(4月は残酷極まる月だ)によって、前世代の詩的慣習と趣味から決別し真の意味における20世紀の詩がはじまった、とある。形而上派の詩人である。『荒地』は現代の「神話」のスタイルを最高度に示した作品だと評価されている。『荒地』433行を読み終えたなら冒頭の1行にかえってみたまえ、当初逆説的な表現かと思われたこの1行が決定的にrealな表現に変容している、これが詩を読む歓びというものである、と評している。1948年ノーベル文学賞受賞。

 

個人的には、「『岩』のコーラス」(編者訳)が最も好きである。

 岩

 ・・

わたしは諸君に云おう、諸君の意志を完璧にせよ、と

わたしは云おう、収穫を念頭におくな、 

 ただ、正しく種まくことを考えよ。

 

 世界は廻り世界は変る、

 ただ、ひとつのことは変わらない。

 わが年月のすべてのうちに、ひとつのことは変わらない。

 いかに諸君がかくそうとしても、このことだけは変わらない。

 善と悪の永遠の闘争は。

 

 打ち倒すものは多く、建設するものは多く、復興するものは多い、

 仕事をひきのばしてはならない、時と腕を浪費してはならない、

 粘土は採掘場から掘り、鋸は石を切らしめよ、

 鍛冶場の火は絶やしてはならない。

 

「バーント・ノートン」(鍵谷幸信訳)の

 ・・

 なにごとも不可能ではない、なにごとも、

 信仰と信念のひとたちにとっては。

 それゆえにわれらはわれらの意志を完璧にしよう。

 おお、神よ、われらを助けたまえ。

 

 ・・終りは始まりに先行する。

 そして終りと始まりとは常にそこにあった 

 始まりの前に 終りの後にある。

 するとすべてのものは常に今なのだ

 

 これも好きですね。