蒼穹の昴3 浅田次郎

2004年10月15日第1刷発行 2010年2月2日第12刷発行

 

裏表紙「落日の清国分割を狙う列強諸外国に、勇将・李鴻章が知略をもって立ち向かう。だが、かつて栄華を誇った王朝の方かいは誰の目にも明らかだった。権力闘争の渦巻く王宮で恐るべき暗殺計画が実行に移され、西太后の側近となった春児と、改革派の俊英・文秀は、互いの立場を違えたまま時代の激流に飲み込まれる。」

 

第5章 謀殺(承前)

アメリカ人ジャーナリストのトーマス・バートンと日本の新聞記者の岡圭之介は、后派と帝派の要となる恭親王が病に倒れれば、西太后は直隷総督に栄禄を任じ軍を握らせ、袁世凱と組むことになるが、それは清朝の植民地化を招く、過激な帝派の文秀は水も滴る色男で人気があるから、あと10年清が持てば、立憲君主国家を作ることができるなどと時代を論じる。

順桂は爆弾を抱えて西太后もろともに自爆する爆弾造りのための金を爆弾屋に与える。楊は蠍に刺されて亡くなるがその事実は伏せられて下野したと聞かされた西太后は自らも引退する。直後、楊は栄禄に殺害されたのではないかと疑う西太后は栄禄を問い詰め、栄禄は白状するが口から出まかせを言って西太后を感動させ、帝を廃位させて西太后に即位するよう求める。

 

第6章 双頭の龍

香港割譲の交渉に当たったイギリスのマクドナルド外交官に対し、宰相恭親王のかわりに全権委任を受けて登場した李鴻章は99年租借を提案して難しい交渉を成功させる。今際の際で恭親王は順桂に韃靼語で遺言を伝え亡くなると、普段は温厚な李鴻章が後は若い者が勝手にするがよいと怒りを露わにする。外国記者団に対し西太后付の御前太監李春雲は西太后の許しを得て正確に西太后の姿と自らの信条を切々と語る。楊の死体が運び込まれた西華門外の宦官製造人の畢五の店で偶然文秀と李春雲は再会する。互いに敵味方だが、心打ち明ける。春児の師匠で酒と阿片に酔いつぶれた陳九老爺が崔副総管に殺されて死体を見た李春雲はすぐに処理すべき遺体を置いて陳九のために買い戻したお宝を取りに帰ったが、大総管が李春雲のいないことに怒り狂い、戻ってきた李春雲に棒打ちの刑を下すものの、正義を貫き人間の誇りを持ち続ける李春雲を誰も叩くことなどできないと拒否し、大総管と副総管はその場から逃げていく。