中原の虹1 浅田次郎

2010年9月15日第1刷発行

 

裏表紙「『汝、満州の王者たれ』予言を受けた親も家もなき青年、張作霖。天命を示す“龍玉”を手に入れ、馬賊の長として頭角を現してゆく。馬と拳銃の腕前を買われて張作霖馬賊に加わった李春雷は、貧しさのゆえに家族を捨てた過去を持つ。栄華を誇った清王朝に落日が迫り、新たなる英雄たちの壮大な物語が始まる。」

 

緒章

主人公の張作霖は、占い師から、“汝は、紫微宮の星座に護られている、汝、満州の王者たれ、東北の覇王たれかし”と宣託される。

 

第1章 白虎の張

春児の兄春雷は、総攬把の張作霖に見込まれて1千元で買われ天命を取りに行く供をする。乾降帝が大清の御陵に匿した龍玉を見つけ出した張は、天命がなければ五体が粉々に砕けるが無事であった。張は黄龍旗を掲げて紅鬼子を一網打尽にし、春雷も手柄を立てる。帰途、馬占山が占い師から宣託を賜ったことを春雷は聞かされる。張は見事な交渉術で総督から十万元を支払わせることに成功する。

 

第2章 風のごとく

袁世凱西太后に軍政ともに明るい徐世昌を東三省総督に任ぜられたいと上奏する。徐は袁世凱張作霖の実力・人気を語り、西太后から召見を賜る。西太后袁世凱の忠誠心を疑っていることを知るともに、張作霖の実力・人気を伝える。その場にいた大総管の李春雲に李春雷が似ていることに徐が気付いくと、西太后は徐を退席させる。袁世凱が幽閉された光緒帝がいる小島を訪ねると、聡明だった光緒帝は正気を失っていた。が実は狂気を装っていただけで、袁世凱に龍玉のありかを探せと命じ、再び子どもの姿に戻る。

正月に機関車と並走する張作霖の白馬、春雷の竜騎馬、秀芳(馬占山)の斑馬が駆けていく。白旗堡という駅のプラットホームで駅舎にいた馬賊と列車を追ってきた馬賊の銃撃戦が起きる。吉永という日本人将校と秀芳の別れた妻で盗賊の一味に堕ちていた賛賛がいた。賛賛を咄嗟に乗客だと張作霖に偽ってかばった春春雷を助けるため、秀芳は賛賛を撃ち殺す。日本の牛込で学生をしていた頃に家に北京語を話す留学生が出入りして北京語を流暢に話せる吉永は馬賊の根城で酒を酌み交わす。秀芳は“賛賛を殺した”と腹に蟠る毒を吐き出し、廻りの男たちも毒を外に出そうとして大声を上げて、飲み直す。春雷や吉永を知って初めて人を信じられると語り、一方で漢人のもめごとに日本人が首を突っ込んできたのに張作霖が心底怒り吉永を殺しかけたと語る秀芳の話を聞いて吉永は馬賊の事を知る。