改革は実行 私の履歴書 松本紘

2016年5月18日第1刷

 

帯封「京大を改革し、理化学研究所トップへ その異色の経験は、後進への叱咤となる 真にイノベーションを起こす場を、日本の教育研究機関に根付かせたい。iPS細胞の研究は、松本先生の決断と実行力で体制が整った。リーダーとしての心得を松本先生に教わった。山中伸弥氏(京都大学iPS細胞研究所長)」

 

目次

第1章 貧しいけど豊か

第2章 研究者へのいざない

第3章 家族との生活

第4章 探究には手段を限らない

第5章 改革は実行―副学長まで

第6章 改革は実行―総長として

第7章 グローバル時代の人間力

第8章 楽しんで生きる

第9章 教育と研究の未来

第10章 日本からイノベーション

 

・2015年4月に何の縁もなかった理研理事長に就任。

・1942年生まれ。小学5年の時、1家5人が六畳一間では手狭になり親族のトタン張りの倉庫を借りて住んだ。母の手作り絵本「ひよこ物語」は感動的な物語だった。色鉛筆でチドリ、リス、ツバメなどの動物や昆虫が描かれ、文章はペンで書かれ、111頁もある。郡山中学、奈良女子大学文学部附属高等学校、京都大学電子工学科、大学院と進み、京都大学に奉職した。もっとも影響を受けた大林辰蔵先生は先見の明があり、大学教授にも人間味があって視野も広い知的リーダーがいると感じるようになった。双子のうち脳性小児まひの長男のお陰で家族の結束が強まり、互いを思いやる幸せな家庭が築けた。2005年副学長・理事に就任。最も印象に残ったのはiPS細胞の研究体制の整備。例えばiPS細胞では知的財産権の保護活用で対策を練り、中間法人を設立して知財管理会社を設立した。2008年京大総長に就任。2013年6月国立大学協会会長に選出された。日本人はもっとコミュニケーション能力を高める必要がある。これを顎力と呼び、学力、額力(前頭葉の力、人の気持ちを感じ思いやる能力)、楽力(何事も楽しめる力)と併せ、人間の力は4つのガクリョクからなると言ってきた。科学がもう少し進歩すると科学の側が思想に近づいていくのではないかと思っている。私は優れた科学技術に思想を加味した生存学の解決策を日本から世界に発信していくことができればと考えている。日本は発展した科学技術と自然との共生、欲望抑制の思想をミックスさせられる国だと思う。