親鸞 完結篇(上) 五木寛之

2014年11月1日第1刷発行

 

都に戻った親鸞。9年が過ぎる。西洞院で長男の善鸞らと静かに暮らす。怪僧・覚蓮坊はかつて親鸞と一緒に叡山に登った良禅。親鸞への愛が憎しみに変わり、親鸞の夢を潰したい。申丸に親鸞の書いた『教行信証』を盗み出せと命じる。申丸は親鸞の長男善鸞に多額の貸付があり、借金の肩代わりに一晩だけ盗み出せと唆す。善鸞は寝ている親鸞から持ち出そうとするが、親鸞は起きていた。誰が見たいと言っているのか突き止める代わりに持ち出すのを許す。善鸞は申丸について覚蓮坊がこれを読みたがっていたことを知るが、覚蓮坊は返却しない。白河印地の党が覚蓮坊の悪だくみを見破り、馬と牛の戦いとなるが、ツブテの弥七が黒頭巾や牛頭王丸と血のつながった末裔たちを引き連れて覚蓮坊を襲い、火が放たれる中、善鸞も命がけで書を取り戻した。唯円は一人常陸に旅立つ。斬首された安楽坊遵西の首を持ち去った娘が宋に渡り、竜夫人となって帰国して仮上として綾小路で店を構えて成功する。遵西の仇を討とうとしている竜夫人は常吉に内心を吐露する。一方で、覚蓮坊が印地の党の若頭勘太と申丸の他、黒面法師を従え、陸と海と材木商を束ねようとしていた。銭の流れを牛耳る申丸と竜夫人。善鸞は竜夫人の建立する寺に親鸞を迎えたいと言われて親鸞に相談するが、親鸞は拒否。本願ぼこりと造悪無碍に胸を痛める。東国から専修念仏だけで浄土に行けるのではなく秘法があるのではないかとの疑問を抱いた3人が親鸞を訪ねる。がその考えは誤りであると親鸞は説く。

 

親鸞の周囲で、様々な人物が、力をモノにして、世の中で権勢を振るおうとしている。親鸞の念仏とは一体何なのだろう?と思わず、思ってしまった。