日本4.0 国家戦略の新しいリアル エドワード・ルトワック 奥山真司・訳

2018年9月20日第1刷発行

 

帯封「世界的戦略家による緊急提言! 内戦を完璧に封じ込めた『1.0』江戸、包括的な近代化を達成した『2.0』明治、弱点を強みに変えた『3.0』戦後。そしていま、日本は自ら戦える国『4.0』に進化する!」「日本に核武装はいらない。必要なのは『先制攻撃能力』と『作戦実行メンタリティ』だ。もし日本が本当にリアルな戦略を考えるならば、最優先されるべきは少子化対策だ。日本のチャンスは北朝鮮の非核化が本格的に開始されてからだ。戦争で必要なのは、勝つためになんでもやるということだ。そこにはズルをすることも含まれる。目的は『勝つこと』であり、『ルールを守ること』ではないからだ。豊富な軍隊経験を持ち、イスラエル軍や米軍などでアドバイザーを務めた戦略論の革命児が語る!」

表紙裏「戦後日本を守ってきた『同盟による抑止』。しかし、これが通用しない相手に対し、どうやってこの国を守るか? その答えが「日本4.0」だ。先制攻撃能力の構築、日本に必要な特殊部隊のあり方など、世界的戦略家による緊急提言」

 

この帯封は良く出来ている。本書の内容を極めてコンパクトに纏めている。現岸田政権はまさしくこの4.0への舵を切ろうとしているかのように見える。以下、若干の雑記録。

 

・包括的チャイルドケアシステムの構築として、「まずは不妊治療の無料化。イスラエルはこれを100%実施」「次は出産前の妊婦が必要とする諸費用、出産費用、さらには小学校に行くまでのチャイルドケアの費用を国が負担する」「イスラエルでは、大卒の女性が生む子どもの数は平均で2.5人に達している」「これは国内の心理的な空気も一変させる」

・「韓国は北朝鮮問題に対する当事者意識や国防への責任意識をまるで持ち合わせていない」「首都機能をソウルから南の大邸、必要であればそのさらに南側に移す」「非武装地帯から50キロ以内にある企業に対し税負担を重くし、さらに移転する企業には税制優遇措置を設けて、光州への移動を促す」「韓国陸軍の保有する戦車の数が、北朝鮮のそれと比べて圧倒的に少なかった」「西ドイツとイタリアが戦後まもなく導入したM-47パットン戦車が更新の時期に来ていた」「新しい砲を載せ替えて韓国に運べば、たった半年で、しかもほとんどコストをかけずに一千台もの戦車を得ることができ、一気に問題が解決するはずだった」「しかし、韓国政府は、すぐに配備できる戦車一千台のかわりに、開発するのに7,8年もかかり、多額の費用も要する新しい国産戦車を欲しがった」

・「見事なパレードを行う軍隊ほど実際の戦争には役に立たない」「本物の演習のための時間と予算を食いつぶしてしまう」からだ。

・「米中の対立の主戦場は、もはや軍事的な領域から、地経学的な領域、すなわち経済とテクノロジーをめぐる紛争に移りつつある。」

・「いまや世界的大企業となったグーグルなどが何に力を入れているかといえば、小規模な会社の買収である。これらの大企業に買収された小さな会社の方が、社員一人あたりのイノベーションを起す確率は高い」、「シリコンバレーですら同様だ。現在のアメリカにおけるAIの中心地はすでにテキサス州のオースティンに移っている」

 

巻末の訳者解説では、ルトワックの視点を理解するポイントとして①世界観を変える②戦略の理想を実現した存在としてイスラエルフィンランドを挙げている③先進国で失われつつある「戦士の文化」を強調している点を挙げている。

 

結構、興味深く読めた。

 

北朝鮮問題究極の決断。自衛隊を「戦う組織」に。AIで戦争は終わらなくなる?