ラストエンペラー習近平 エドワード・ルトワック 奥山真司[訳]

2021年7月20日第1刷

 

帯封「『大国』になるほど弱くなる。中国がはまった戦略のパラドックス 『台湾有事』に秘策あり! アメリカ、EU、日本、オーストラリア、インド、ベトナム・・・ 『中国包囲網』が習近平を追い詰める!」「☆習近平毛沢東以来の『皇帝』となった ☆最新の外交戦略「チャイナ4.0」は最悪の選択だ ☆アメリカvs中国を超えた、『世界』vs中国の対立 ☆仏英独がフリゲート艦、空母を派遣する理由 ☆ジャック・マーはなぜ『罰』を受けたのか? ☆アメリカ真の敵はスパイ国家としての中国 ☆本当は役に立たない『世界最大の中国海軍』 ☆オーストラリア、EU、日本、インドが習近平をつまずかせる ☆台湾有事、日本はスウェーデンに学べ ほか」

表紙裏「ラストエンペラー習近平 国家主席の任期撤廃など、ますます強まる習近平独裁体制。コロナ対策でも自信を深め、強硬な対外政策をエスカレートさせている。だがルトワックはいう。戦略面で中国は最悪の選択を行った、と。世界的戦略家が中国の『本当の実力』、米中対立時代の世界を鮮やかに分析する!」

 

エドワード・ルトワック

 米戦略国際問題研究所CSIS)上級顧問。戦略家、歴史家、経済学者、国防アドバイザー。1942年、ルーマニア生まれ。ロンドン大学で経済学で学位を取った後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で1975年に博士号を取得。同年国防省長官府に任用される。国防省の官僚や軍のアドバイザー、ホワイトハウス国家安全保障会議のメンバーも歴任。著書に『中国4.0―暴発する中華帝国』、『日本4.0―国家戦略の新しいリアル』『自滅する中国―なぜ世界帝国になれないのか』ほか多数。

 

・冷戦期、スウェーデン王国は、フィンランドの抑止力を高めるために、非公式な物的援助を準備していた。そのひとつは、大量の対戦車兵器を配備することだった。もしソ連の侵攻が現実のものとなったとき、フィンランドに対戦車砲を供給するためだ。そのほかにスウェーデンが行ったのは、空軍力の過剰な強化だった。当時、スウェーデン空軍は欧州最大規模にまで達した。自国を守るためではない。フィンランドを守るためにである。・・さらにスウェーデン軍はフィンランドとの国境に近い北部に精鋭部隊を配置している。もちろんフィンランドからの侵攻に備えるものではなく、ソ連フィンランドになだれこんできたときのための部隊だった。これらはすべて中立国という立場のままで行われたことだ(85p)。

・日本も同じようなことができる。何もいわずに台湾から100マイル以内の、沖縄周辺の南西諸島に集中して、部隊を配備することもできるし、とにかく地対艦ミサイルを大量に購入してもいい。それが中国に対する抑止力となるのだ(86p)。

・中国にとっての「小国」が、それぞれに「つまずき戦術」を駆使することで、習近平の独裁体制の揺れをどんどん大きくする(110p)。

 

・最後の「訳者あとがき」はコンパクトに本書の要点をまとめている。

第1は、中国の、習近平政権の戦略の稚拙さを厳しく指摘。中国は歴史的に戦略下手であり、他国がどのような反応をするかを理解できないと説く。

第2は、「逆説的論理」についての説明。敵が思いもしない攻撃を行うべきであると教えてきた歴代の戦略思想家よりさらに踏み込んで「なぜサプライズを狙うべきか」というところまで論じる。

第3は軍事技術のイノベーションの歴史について語っている点。空母や水上艦を時代遅れとみなし、これらの主役はドローンとAIになると論じる。

 

中国の戦略は果たして5.0に進むのか、それとも4.0で突っ走るのか。怖い面があるが、知的興奮をそそられる面もある。