2021年10月20日第1刷発行
干田ケリム 東トルキスタン・ウルムチ生まれ。在日ウイグル人の人権活動家、日本ウイグル協会会長。機械工学専攻で、中国石油大学で学士課程を、次いで新疆大学大学院で修士課程を修める。2008年に来日。東京工業大学大学院で博士課程を修めたのち、日本で就職。
楊海英 南モンゴル・オルドス高原生まれ。静岡大学人文社会科学部教授。北京第二外国語学院日本語学部卒業。文化人類学専攻。著書『墓標なき草原』(司馬遼太郎賞受賞)など多数。
帯封「100万人いじょう強制収容所に ユニクロなど日本企業も加担⁉『ウイグル人根絶』を命がけで告発!」
少なくとも1000か所を超える『強制収容所』が設置され、少なくとも100万人以上(アメリカ国防総省高官によれば、約300万人)のウイグル人が収容され、『漢人化』と『中国共産党への忠誠』が強要されている。
不妊措置で新生児が半減
中国当局によるウイグル人に対する不妊措置(子宮内避妊器具装着や不妊手術)の結果、新疆ウイグル自治区の出生率(人口1000人あたりの出生率)は、2017年に約16人だったのが、2019年には約8人と半減した。」
『政治的信頼度』の点数化
ウイグル人の『政治的信頼度』が点数化されている。ウイグル人ならマイナス10点、パスポート保持者ならマイナス10点、礼拝していればマイナス10点、問題とされる26カ国への訪問歴があればマイナス10点などとされ、マイナスの合計が70点に達すると、要注意人物として強制収容所に送られる。
ウイグル人は『テロや違法な宗教に関するファイルの所持を確認するため』として、当局指定のスマホアプリのインストールを強要されている。スマホを持たない子供や高齢者は首にQRコード付きのカードをぶら下げている。」
表紙裏「ウイグル語の使用禁止、不妊措置による出生数の半減、スマホ・GPS・カメラによる徹底監視、『政治的信頼度』の点数化、100万人以上の強制収容…習近平政権が推し進める『ウイグル人根絶』の恐るべき実態を告発する!」
第1章 ウイグル民族「ジェノサイド」の惨状
・1964年から1996年にかけて中国政府は東トルキスタンのロブノールに建設した核実験場で延べ46回(地表核爆発は12回、空中核爆発は11回、地下核爆発は23回)、総爆発出力およそ20メガトンの核爆発実験を行う(事前予告、安全対策を取ることなく)。
・トルグン・アルマスの『匈奴簡史』『ウイグル古代文学』『ウイグル人』の3冊はウイグル人の民族運動の原動力となる重要な研究書。
・現在は在日中国大使館が在日ウイグル人のパスポート更新手続きを受け付けなくなっている。帰国すれば、収容所行きの運命。
・いまの新疆では子供の名前も自由に選べない。モハメッドといったイスラーム色の強い名前は明確に禁止される。町や通りの名前もウイグル語から中国語名に変えられた。私の名前の「干田(ウダ)」はウイグルの地名、父の家族が生まれた場所。死んで名前を検索すれば新疆のホータン付近の地名が出てくるのでウイグル人かなと考えてくれるかもしれない。帰化したウイグル人は皆そんな風に日本名をつけている。
第2章 ウイグル強制収容所の実態と日本への期待 ハリマト・ローズも加わる
新疆ウイグル自治区チョチェク市で生まれる(イリ・カザフ自治州タルバガタイ地区)
・ウイグルの少なくとも1000か所の強制収容所は2016年末頃から作られ始める。
・収容所に送られた多数のエリートが実名で126ページ以下に掲載。ウイグル人女性は漢民族と結婚させられる(ウイグル人男性との結婚を認めずウイグル人の人口を減らすため)。
第3章 古い中国の新しい疆域政策 楊海英
・もともと「モグリスタン(モンゴル人の土地)」と呼ばれていた新疆。新疆の名はパミール高原の東側を乾降帝が新しく統合した疆域という意味でつけられた。現在ウイグル文字を使っているのは満州人とモンゴル人。当のウイグル人はアラビア文字を使っている。1933年に「東トルキスタン・イスラーム共和国」は34年に滅び44年に「東トルキスタン共和国」が建国される。ウイグルは、ロシア革命後の1921年にテュルク系の言語を話す各オアシスの代表をカザフ共和国の首都アルマ・アタに招待して民族自決のための会議を開き、そこでロシア人のセルゲイ・マローフという古代テュルク語学者が「皆さんを『ウイグル』と呼んではどうですか」と提案したのが始まり。中国共産党は国民政府とは異なって民族であることを認めたものの、1955年「新疆ウイグル自治区」ができる。「ウイグル族自治区」ではなく。
この第3章はウイグルの歴史を学ぶのには大変勉強になる。が、基礎知識がほとんどなかったので、まったく消化できていない。