2020年10月25日初版 2021年6月10日再販
「第22回(2021年度)読売・吉野作造賞受賞」の帯封。帯封の裏には「デジタル技術の深化は、新興国・途上国の姿を劇的に変えつつある。中国、インド、東南アジアやアフリカ諸国は、今や最先端技術の『実験場』と化し、決裁サービスやWeChatなどのスーパーアプリでは先進国を凌駕する。一方、雇用の悪化や、中国が輸出する監視システムによる国家の取り締まり強化など、負の側面も懸念される。技術が増幅する新興国の『可能性とリスク』は世界に何をもたらすか。日本がとるべき戦略とは。」と。この帯封に引かれて買ったものの、ちょっと期待外れ。データや数値は一応拾ってくれているものの、私の関心はどちらかというと個別具体的な事象やデータにあるので、その取り上げ方が私からすると今一つだったように思う(でも、例えばインドでは生体認証ID「アダール/アドハー」の実績は2019年12月時点で12億5000万人以上が登録済みで成人の95%がアダールIDを保有しているというのは驚異的な数字であり、そういう紹介は為になる)。勿論、インドと中国のIT戦略の違い、アフリカ、東南アジアの最新の諸事情等、類書がない中で新興国の成長ぶりを知るには良い本だと思う。最後に日本の今後の歩むべき道について言及し、著者は、新興国のデジタル社会にアンテナを張り、関わることが求められていると述べ、そのためには、日本が強みにしてきた「手を動かし、足を使う」ことを推奨している。こういうデジタル化を有効に進めるためにはアナログが一定程度必要だというのには不思議な感覚を覚えるとともにさもありなんという感想を抱く。