民主主義とは何か 宇野重規

2020年10月20日第1刷発行 2021年2月10日第9刷発行

 

帯封に「東大で詠まれた本 1位  2021年新書大賞 2位」

東浩紀氏絶賛!『民主主義とは何なのか、本当は誰も正確にはわかっていない。だから同時に問い続けなければならない」とあり、これにつられて購入。

裏帯に「出口治明氏推薦!『民主主義を巡る諸問題とその解決の方向性を1冊に凝縮した待望の本」とも。

 

しかし、内容をざっと読んでみると、私が学生の頃に呼んだ昔々の政治学の本のレベルと、さして違いを見出せない。どうして今改めてこの本が売れるようになったのか?その理由は内容というより著者の話題性にあったのではないだろうか。。。

「参加と責任のシステム」というキーワードが全体を貫いているというのはその通りだと思いますが(はじめに)、それとて新鮮味があるわけでもない。

「序 民主主義の危機」として「ポピュリズムの対等」「独裁的指導者の増加」「第四次産業革命の影響」「コロナ危機と民主主義」を取り上げ、第1章民主主義の誕生、第2章ヨーロッパへの継承、第3章自由主義との結合、第4章民主主義の実現、第5章日本の民主主義、というように民主主義の歴史的展開・発展・批判・到達点を時系列に沿って整理し、最後に「結び 民主主義の未来」と題して、多数決と少数派の尊重、民主主義とは選挙に尽きるのか、制度か理念か、四つの危機を乗り越えて、第四次産業革命と民主主義の未来図、何を信じるべきかという項目でまとめているので、コンパクトに、分かり易くまとめているよね、とは言えるとは思う。が、繰り返すが目新しさはない。

せめて、これからの時代、誰もかつて経験したことのないデジタル社会が世界同時進行で、かつ国によって様々な進展速度が異なる中で、個々人が膨大な情報量を送受信する中で民主主義の理念をどう制度化することが可能なのか、技術と制度と理念をミックスさせた議論を深化させていかないと、全然深まらないように思う。

政治学者だけの仕事ではなく、政治学者とテクノロジストと哲学者を含めた思想家との対談集でも組んでもらった方がより一層現代的で興味が涌くと思います。