新装版 鬼平犯科帳(四)1⃣ 池波正太郎

2006年7月12日第1刷発行

 

裏表紙「はっと、平蔵が舟の中へ身を伏せた。荒屋敷の潜門がしずかに開き浪人風の男があらわれ、あたりに目をくばっている。(これほどの奴がいたのか…)平蔵の全身をするどい緊張がつらぬいた。凄絶な鬼平の剣技を描く「血闘」をはじめ「霧の七郎」「密通」「夜鷹殺し」など全八篇。」

 

霧の七郎

 見た目にはずんぐりと肥った無様な体躯で垢臭く髭だらけで袴もつけぬつぎはぎだらけの縞の袷にわらじばきの浪人上杉謙蔵が、霧の七郎から平蔵の息子辰蔵の暗殺を25両で請け負ったが、辰蔵がこの浪人を25両で買う。辰蔵は浪人の腕の凄さが分からず父平蔵から、あの顔かたちで損をしつづけてきた、世の中の人間の多くはうわべだけで人の値うちをはかってしまうゆえ、と諭す。

 

五年目の客

 丹波屋のお内儀におさまったお吉は5年前に江口の音吉の客だった。その音吉が坂田屋平太郎と名を変え、丹波屋で半月ほど泊まり続けていた。お吉と音吉は逢引を重ねるようになったが、音吉の目的は羽佐間の文蔵の子分として丹波屋に押入り強盗することにあった。がお吉は音吉との逢引がこのままでは旦那にバレると思い、音吉を絞め殺す。音吉が死んだとは知らず羽佐間の文蔵一味が丹波屋に乗り込んだところで平蔵が御用。お吉には音吉と関係があるはずがない、おのれでおのれに気を付けよ、亭主が案じていようとして放免する。

 

密通(前編)

 お久栄の母方の実家からの頼み事として平蔵は、久栄の母の兄・天野彦八義盈を訪ね、家来の遠藤小助が50両を盗み取って逃げたので捕まえてほしいと依頼される。天野屋敷を訪ねたとき奉公人ひとりひとりに小助について気付いたことがあれば申してくれと頼んだ際、皆口を揃えて何もないという不自然さに違和感があった。後日奉公人の一人お元が平蔵を訪ね、小助が逃亡した同じ夜に用心の妻が逃亡したことを伝えた。それでもまだ隠している何かがありそうだった。