「法窓雑記」『嘘の効用』末広巖太郎

この中の「教育と直観」は俊逸です。裁判官であった著者の父が語った言葉は深い。

「なにもおれはそれほどむずかしい理屈をいったのではない。知識の極致に達すると直観と理論とがおのずから一致する、そのことをただおれの体験から感じていっただけのことだ。しかしお前もこれから人の子を教える以上、直観の価値を軽視してはいけない。ことに学生に対しては直観力を養成するように極力しむけなければいけない」

アメリカのケースメソッドという教育と、理論が先走りする日本の法教育との対比は、なるほどと頷かされる。今から100年も前からこのような深い洞察を持っておられる学者がいたことに驚愕する。