15歳の寺子屋 森をつくる C・W・ニコル 

2013年3月25日 第1刷発行

 

1940年、ウェールズで生まれ、40歳より日本で生活。1995年に日本国籍を取得。長野県の黒姫山のふもとに森を作って30年。森林が国土面積の67%を占めながら、豊かな原生林は実はいまや2%にまで激減。伐採した跡地に針葉樹のみを植える日本の植林政索と林道造成は、森から流れ出す川の土手をコンクリートで固めて砂防ダムにしてしまい(そうしないと森林伐採により突発的な洪水や浸食、地すべりが起きる)、コンクリートで護岸された川ではサケやアユが遡上できなくなり、魚も姿を消し、動植物が次から次へと姿を消していく。そんな日本の姿を見かねて、絶望の淵に落ち込んだ時に、故郷のウェールズの醜いボタ山が森林公園に姿を変えたのを見て、日本の森7600㎡の土地を買い取り、自分で森を作ることに。こうして「アファン(風の通る谷)の森」づくりが始まる。

最初に取り組んだのはササをかりつくすこと。ササはカビをはじめ生物の繁殖を抑える働きをするので。もっとも鳥がササに巣を作っている場合は刈らない。昆虫の増えすぎを抑えるためにも小鳥を森に戻すことが必要だから。針葉樹だけでなく広葉樹もある混交林となれば根っこが互いに絡まり合い土壌が浸食されにくい。ブナなどの広葉樹林が緑のダムと呼ばれるのはこういうわけだそうだ。2010年の調査ではアファンの森では80種類の樹木も含めて502種の植物、鳥は59種、クモは150種、トンボは37種。26種類の絶滅危惧種がここで暮らしている。クマも殺さず共存を目指している。

2002年8月15日、ウェールズのアファン・アルゴールド森林公園とアファンの森が姉妹森になる同意書に署名。日本には全国で130人しかレンジャーがいない。カナダのレンジャーは4000人を超え、アメリカにはその2倍以上もいる。日本人の自然音痴を改善するため、レンジャーとフィールドワーカー養成のための専門学校創設に関わる。現在では東京環境工科専門学校という名前で。2013年2月1日現在、アファンの森は30万5千㎡。現在はホースロギング「馬搬」の実現を目指している。岩手大学等が中心となってホースロギングの普及活動を行っている。

 

時に自然のことに思いを馳せ、自然に体を触れさせ、自然を感じる。頭でっかちになりがちな現代の日本人こそが読むべき一書です。