ブラック・スクリーム(下)ジェフリー・ディーヴァー 池田真紀子訳

2021年11月10日第1刷発行

 

帯封「今度のどんでん返しは、イタリアで! シリーズ初の欧州が舞台 特別収録短編『誓い』ついにライムとサックスが…」

裏表紙「イタリアに飛んだライム一行は、リビア難民誘拐事件に遭遇、森林警備隊員エルコレらチームと組む。〈漆黒の絶叫〉(ブラック・スクリーム)に駆り立てられる犯人の目的は? 当地でアメリカ人留学生がからむ暴行事件も調査することになったライムは、想像を絶する真相を探り当てる。リンカーン・ライムシリーズ第13弾! 特別短編『誓い』も収録。」

 

下巻では、すべての謎解きがおこなわれる。切れ者検事のダンテ・スピロがライムたちを嫌悪したのは先の戦争体験から来る個人的な感情からだった。また誘拐事件はステファンの単独事件ではなかった。そもそも誘拐事件の被害者は実はテロリストとして目を付けられ、表の顔とは別の顔を持つシャーロット・マッケンジーがステファンによる奇怪な誘拐事件を起こさせるその蔭で薬物で真実を告白させようとしていた、という事件だった。またフリーダへのレイプ事件はガリーの犯行ではなくガリーに罪を擦り付けようとしたナターリアによる犯行だった。そして誘拐事件とレイプ事件はやはりつながっていた。マッケンジーにイタリアでのテロ計画が進行しているとの情報を伝え、その計画のためにテロリストをスカウトしたのは同一人物イブラヒム。イブラヒムは監視リストに載っておらず、誘拐の被害者の一人の妻ファティマのアフリカにいる家族を人質に取って爆弾テロリストの実行犯に仕立て上げる。ジャンニは爆弾をファティマに届ける役だ。ジャンニとファティマとの電話のやり取りの音声を入手したライムたちだったが、手がかりは何も見つからない。が、その時、音に異常な能力をもつステファンに録音を聞かせることを思いつく。案の定、ステファンは普通の人なら聞き分けられない音を聞き分けてファティマの居場所を突き止め、爆破指示の直前、アメリアはファティマを発見して射撃。起爆装置の携帯電話を粉砕し、ファティマからジャンニの特徴を聞き出す。イブラヒムとジャンニの雇い主はなんとライムたちのイタリア行きを手助けしたアメリカIT起業家のヒルだった。ヒルの目的はイタリアで移民にテロリストが紛れているという世論誘導を起こして移民緩和策の反対勢力を拡大することだった。最後の最後で、今回大活躍した森林警備隊エルコレが証拠物件の手続きを怠り誘拐事件の証拠物一式が盗難に遭う。切れ者スピロはライムとアメリアを素敵なレストランに招待し、かつエルコレも呼び、盗難事件が移民政策を反対する政党を支援する国家警察ナポリ本部のロッシ警部の仕業であることが明らかにされ、エルコレに新しい職場が提供される。

それにしても、誘拐事件にかこつけて移民テロリストに薬物を飲ませて自白させるというストーリー展開はさすがにちょっとあり得ない話かな?という気がする。テンポは今まで通り素晴らしいが、今までとちょっと違うかなと感じたのは決して起きない事件であるものの、もしかするとそういう事件も起きておかしくない、と感じさせるものから、さすがにちょっとそういう事件はないんじゃない?と読者に思わせてしまうところにあるのではないだろうか?