蒼穹の昴4 浅田次郎

2004年10月15日第1刷発行 2009年4月13日第8刷

 

裏表紙「人間の力をもってしても変えられぬ宿命など、あってたまるものかー紫禁城に渦巻く権力への野望、憂国の熱き想いはついに臨界点を超えた。天下を覆さんとする策謀が、春児を、文秀を、そして中華四億の命すべてを愚弄する。この道の行方を知るものは、天命のみしるし“龍玉”のみ。感動巨編ここに完結!」

 

第6章 双頭の龍(承前)

紫禁城から頤和園に移る西太后は、その直前に北京漢口間を結ぶ京漢鉄道の工事の進捗状況を視察する予定に変更。現場に呼ばれたトムと岡はテロを計画する順桂の変装後に脱ぎ捨てた衣服を発見する。が周囲に人が多すぎて何もできない。突然の雷雨の中、西太后に突進した順桂は両手で西太后を抱きかかえてホームに蹲った直後、李春雲は二人の間に躍り込む。すると順桂の胸から鞠の爆弾が零れ、順桂は周囲の者を巻き込むまいと爆弾を抱えて自爆する。栄禄は光緒帝とその周囲の者の画策であり、城に戻りたいという西太后に対し、それはできない、予定どおり頤和園に移るしかないと言う。光緒帝の前に乾降帝が現れ、韃靼の秘曲を聞く。西太后は遂に栄禄を直隷総督兼北洋通商大臣に任ずる懿諭を渙発すると、変法政治の教祖となっていた康有為と光緒帝は遂に召見する。康は清朝が諸外国に食い破られ、西太后暗殺計画が帝によるものと疑い、更に楊殺害に及んでいる今、科挙を廃止し、袁世凱を君側に立て、大変法をなせという。

 

第7章 福音

カスリチョーネのティエポロ宛の手紙には、一人の人間が人民の生殺与奪の権限を握る理不尽さと自身が最も不幸な存在であることに英明極まりない乾降帝が気づいてしまったために、皇帝の力そのものである龍玉を韃靼族の故地に封じ込める決意をし、兆恵大将軍とカスリチョーネに命じたこと、その代わりにダヴィンチの再来、ミケランジェロの転生と褒め讃えられたアッカデミアの異才、カスリチョーネの全知全能を傾けて龍玉の模倣に挑んだことが綴られていた。

皇帝の詔書太后の懿諭が乱れ飛ぶ異常事態が続き双頭の龍が断末魔の叫び声をあげる中、李鴻章から密書を送られた伊藤博文は日本のために清が列強の植民地とならぬよう帝派と后派の調停のために非公式で訪れる。が、その報が漏れ、栄禄や袁世凱らが駆けつけその晩餐会に招かれる。一方、康は帝の前に姿を現さず、帝は文秀から伊藤を迎え、袁世凱に軍権を賜り、西太后を幽閉しクーデターを起こす以外に清を救う道はないと説かれるが、伊藤は応じない。李鵠章を連れて西太后のいる頤和園に向かうが、「親不孝者め」と叱咤され四面楚歌に陥る。変法派は起死回生の一手として譚を使者に立てて袁世凱を兵部侍郎の破格の位を与える。一方、栄禄は袁世凱に天津に戻るようにと電報を打ち、袁世凱は時代の鍵を握る。が死を恐れずに堂々と己を説得しようとする譚(復生)の姿に嫉妬し栄禄に就く。西太后の孫娘は居酒屋の娘として働くアメリカ人記者の恋人だが、清を巡る世界の動きを正確に西太后に報告し、李春雲とともに文秀だけは生かして欲しいの命乞いする。遂に西太后は李緒帝を捕縛打擲し南海に動座させ、再び紫禁城に入る。変法派の康有為は香港に逃れ、文秀は未来のために生きる義務があると説得されて、妹とともに李春雲の助力もあり日本に亡命する。途中で流れ着いた王逸が出て来て幼き毛沢東の家庭教師になる場面が出てくるが、それはさておき、最後の場面で、西太后は李春雲にすべてをあげるというが李春雲は何もいらないと応えると、唯一、李鴻章が手ずから細工したという小指ほどの七彩の光を放つ金剛石を譲る。天に透かして見ると、、蒼穹のいろが春雲の瞳の中に躍り込む。そして最後に春児が自ら宦官の処置を妹に手伝ってもらう場面で幕が閉じる。