親鸞(下) 五木寛之

2010年1月1日第1刷発行

 

帯封「極悪人も本当に救われるのか?!愛と暴力、罪と罰に苦しみながら、時代の激流に挑む青年の魂の彷徨。全国27新聞に連載、二千四百万読者が熱狂した長篇、ついに刊行!講談社創業100周年企画」

 

法然の門下となり、綽空と名乗る。恵信と名を変えた紫野と再会し妻に迎えて仲睦まじく暮らす。遵西・行空・黒面法師(六波羅王子)が、法然の布教は手緩いと謀議し、それを盗み聞きした弥七、犬麻呂(犬丸)が先手を打とうとする。法然の高弟真空が七カ条の起請文を叡山に送り届けると宣言する。法然は綽空を信じて「選択本願念仏集」一部を託す。そしてもしもの時は世間にひろく選択集をひろめよという。帰り道、遵西が鹿野を見捨てるか選択集を寄越すかと脅してくる。恵信に打ち明け、恵信は三善家に、綽空は犬麻呂に相談する。恵信は妹を助けるために自らと引き換えに妹を引き渡せと要求。そこに綽空が現れる。黒面法師は3人を縛り、2人のうち1人だけ目を針で刺して売り飛ばすと言い、綽空は3人の目を突けと言う。そして法然を嘘つきだと言ってみろと迫る。そこにツブテの弥七が現れ、救出する。4人の弟を棄てて自分だけ山をめざした負い目に綽空は苦しむ。そんな折、綽空は書写を遂に許され、善信の名をもらう。法然は遵西らの本願ぼこりさえも厳しく叱る気持ちになれぬと言い、その法然の教えを大事にしつつ、法然の念仏をこえてさらに前へ出ていく予感がするのが綽空だとも伝える。選択集は柔和な法然の声とは全く別の激しく鋭利な言葉が記されていた。すべてを否定し念仏ただ一つがのこると。そして法然より善信の名をもらい、人は皆悪人であると説く。慈円法然より善信を許せない。法勝寺の九重塔の最上階に鹿野を誘い出しそこに善信を呼び、黒面法師が再び現れる。遵西に向かって鹿野は腹に遵西の子を孕んだことを告げ、遵西が鹿野を助け出す。火が回り、九重塔が焼け落ち、遵西と鹿野の2人は善信の前から消えた。次々と不審な家裁が続き、念仏聖が疑われた。後鳥羽上皇が寵愛する2人の女官が遵西主宰の法会に参加し出家するや、上皇が激怒し遵西らが死罪の宣告を受け、念仏停止の院宣がくだされる。法然は土佐へ、善信は郷里の越後へ遠流される。法然は俗名藤井元彦を、善信は藤井善信(よしざね)を与えられ、自ら親鸞と名乗ることに。法然は、志や賞すべし、世親菩薩、曇鸞菩薩の願につきると称えた。恵信を伴い、旅立つ。