長崎ロシア遊女館《上》 渡辺淳一

2003年5月30日発行

 

吉川英治文学賞受賞。

 

長崎ロシア遊女館

どこまでが史実でどこからがフィクションなのだろうか。

長崎でロシア水夫らが遊女と遊ぶために遊女屋の抱え主との交渉役を務めた盗賊方中村吉兵衛はロシア軍医が梅毒検査のために女性全員の秘所を検べる(陰門改め)と言われて抱え主と相談したが断られ、そのことを軍医に告げると「あなた達は無知です」と一言投げ捨てられた。その後ロシア人だけの遊興所をつくるので婦女子にロシアの責任で検梅を実施するとの手紙が届く。素人女40人が集まり、はじめから陰門改めを言い聞かせ、誰が調べたか教えずに実施した。露西亜マタロス休息所(稲佐遊興所)は開所した。ここが陰門改めの濫觴の地となった。開所半年後、吉兵衛は背後から何者かに斬り殺された。

 

項(うなじ)の貌(かお)

 山田浅右衛門は首斬りが本業と錯覚されがちだが違う。実際の家業は「御試御用」で、将軍家の佩刀、諸大名へ賜る刀、諸大名から献上される刀などの斬れ味を試すのが本業。普通の刀は200人の首を斬ると駄目になるといわれるが、千住回向院になる浅右衛門が使った斬首刀は500人を斬ったと言われる。「項の貌」というタイトルは、著者は医者としての知識と勘から、浅右衛門は項の下5ミリの空隙を斬り落としたことで刃こぼれせずに500人を斬ったのであろうと、浅右衛門の一生を想像する。

 

かさぶた宗建

 どうやらこちらは天然痘撲滅に命を賭けた実在の医師を描いた作品らしい。