新装版 鬼平犯科帳(一)1⃣ 池波正太郎

2005年7月27日第1刷発行

 

裏表紙「斬り捨て御免の権限を持つ、幕府の火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵。盗賊たちには『鬼の平蔵』と恐れられている。しかしその素顔は、義理も人情も心得た苦労人である。彼を主人公に、さまざまな浮世の出来事を描き出す時代小説。テレビに舞台に人気の高い鬼平シリーズ第一巻。」

 

唖の十蔵

同心の小野十蔵(唖の十蔵)が狙っているのは、「野槌の弥平」。なかなか手がかりがつかめなかったが、小間物屋の助次郎をさぐってごらんなさいましとの密告が元盗賊の岩五郎からなされ、助次郎の家を探ったところ、助次郎の女房おふじが夫を殺したといって泣いていた。おふじは、助次郎がお腹にいる子どもなんてほしかねえ、別の女とどこかへ行くと言われ、腹を踏みつけられて夫を殺害してしまった。十蔵は事ある度に妻から私の持参金がどれほど役に立ったことか、それをお忘れかと言われ、公私ともに無口になっていた。弥平は長崎屋に潜入し大勢を斬殺し380余両を強奪。おふじは十蔵の祖母の縁者の押上村の喜右衛門方に預けられ情を交わし合った。火付盗賊改方の御頭が長谷川平蔵に交代した。十蔵は弥平の手下一人を捕まえたが、おふじとの関係を弥平一味に知られ、おふじが攫われた。おふじを助けに向かう十蔵だが見つからない。手下が平蔵の拷問で弥平の居場所を白状し一味は一網打尽。十蔵は自害し、おふじの水死体が仙台堀に上がった。

 

本所・桜屋

 先日取り逃がした弥平の手下・小川や梅吉が本所に隠れていると聞いた平蔵は自ら初めて市中見まわりに出る。突然背後から襲いかかってきたのは剣友・岸井左馬之助だった。相模無宿の彦十と再会すると、彦十は平蔵が御頭だと知らずに御家人服部角之助の屋敷で賭場がたっていることを伝え、最後に平蔵から手助けを頼まれて後日平蔵の屋敷を訪ねる。そこに出入りしていた小川や梅吉の姿をみた彦十は平蔵にそのことを伝える。彦十は梅吉が大店野近江屋に押し込みをかけるのを手伝わないかと声を掛けられる。梅吉は情け容赦なく邪魔する者は皆殺しにして金品を奪い取る。梅吉と服部の妻おふさが悪事を企てていると見抜き、服部家の屋敷に踏み込み一味を一網打尽にする。おふさは平蔵や左馬之助を見ても気づかず、逆に左馬之助はおふさを思い続けて今日まで独り身で通していた。