2005年7月27日第1刷発行
血頭の丹兵衛
清水門外の役宅内の牢屋に閉じ込められていた小房の粂八（くめはち）は、いま荒らしているのは皆殺しをいとも簡単にする残酷なにせものの血頭の丹兵衛だと平蔵に教える。粂八は密偵となり、命がけで娘が聞き出した宿で逗留してにせものを待っていた。が、そこに現れたのは本物の丹兵衛だった。が昔の丹兵衛ではなく人が変わってしまっていた。丹兵衛の盗人宿に呼ばれた粂八。平蔵たちが一網打尽にするために屋内に乱入すると、粂八はにせものの血頭丹兵衛め、素直に獄門へかかりゃあがれと痰つばを吐きかけた。
浅草・御厩河岸
浅草・三好町の角で小さな居酒屋を営む岩五郎の店に乞食坊主が立ち寄る。今の暮らしの基盤になっていることにそむいちゃいけないと言われる。岩五郎も父卯三郎も元は盗賊の配下だったが、岩五郎は与力佐嶋忠介に説得されて密偵になっていた。そこに大泥棒の海老坂の与兵衛のおつとめに加わることに。与兵衛の見事な手腕に関心しながらも、乞食坊主の言葉を思い出し、本来のおつとめを果たして与兵衛一味は捕らえられた。岩五郎や卯三郎一家は夜逃げした。江戸で暮らしたくない理由があるのだろうと平蔵は捨て置く。岸井左馬之助が平蔵を訪ねて乞食坊主として岩五郎の店に立ち寄ったことを明かす。
老盗の夢
蓑火の喜之助は盗賊の首領から足を洗って京で妻お千代の墓参りに精を出す日々を送っていた。ある時お千代のような大女おとよと出会い、力が漲り始めぴんしゃんしてきた。おとよと気儘に暮らす金欲しさに江戸に出ておつとめしようと仲間を集めて準備万端整えたところで仲間に裏切られて手足を縛られてしまった。縄抜けの術を持つ喜之助が裏切者を成敗して自らも果てたころ、おとよは若い山伏に入れあげていたが、その山伏もどこかに消えてしまっていた。
