オペラ座の怪人 ガストン・ルルー/村松定史 訳

1996年7月17日第1刷発行 2011年6月6日第9刷発行

 

裏表紙「オペラ座での公演中、美しい歌い手クリスチーヌが、怪人にさらわれました。クリスチーヌの恋人ラウルは、クリスチーヌを助けだそうとするうちに、さまざまな謎がとけていきます。なんと、怪人は音楽の天才だったのです。怪人の手から、ラウルはクリスチーヌを無事に助けだすことができるでしょうか?」

 

オペラ座の2人の支配人がやめるので最後の特別なバレー記念公演が行われていた。その日、新人クリスティーヌが主演のカルロッタにかわってマルガレーテ役をつとめ、天使の歌声を披露し、拍手喝さいを浴びた。海軍軍人のラウル子爵は大きなブラボーを送り、クリスティーヌの楽屋に入ってかつて出会った時のことを思い出して言葉をかけたが、クリスティーヌは皆を楽屋から出ていかせ、ラウルは外で息を潜めて立っていた。レースで顔を隠してクリスティーヌが部屋から出てきたとき、ラウルが部屋に配流と誰もいなくなっていた。支配人は次の支配人たちに怪人と交わした契約書の秘密の条項を説明した。1つ、支配人は年間24万フランをオペラ座の怪人に支払う。2つ、2階5番ボックス席は全ての公演においてオペラ座の怪人に使わせる。クリスティーヌに手紙を送ったラウルの下に返事が届く。ある時、ラウルはクリスティーヌの跡をつけると、クリスティーヌは父が眠る墓の前でひざまずき祈り始めた。誰の姿も見えないが、父親がバイオリンで良くひいていた曲の演奏が聞こえてきた。現れたのは怪人だったがすぐに姿を消した。怪人から支配人の下に手紙が届く。約束を守らねば呪われた劇場で今夜の公演は行なわれることになると。カルロッタにも今夜歌えば詩よりも不幸な目にあうとの手紙が届く。その夜、舞台に立ったカルロッタの口から飛び出したのはカエルの鳴き声だった。会場にはシャンデリアが落ち死者と大勢の怪我人が出た。クリスティーヌは行方不明となり、ラウルに手紙を送った。明後日の夜12時にオペラ座の仮面舞踏会でお会いしましょう。白マントに仮面をつけて来て下さいと。会場でラウルはクリスティーヌと見つけると、すぐそばに怪人がいた。クリスティーヌはラウルの腕を掴みひと気のない方へ引っ張っていった。ラウルは怪人の仮面を引きはがしてやるというがクリスティーヌは押しとどめた。クリスティーヌの顔色は青白く目は悲しみに溢れていた。ラウルは怪人を探しに舞踏会に戻ったが見当たらない。クリスティーヌの楽屋に再び戻ると、誰もいない。廊下の足音を聞き化粧室のカーテンの影に隠れると、クリスティーヌが入ってきた。壁が歌っているような声が近づいてきて「エリック、わたしはここよ。準備はいいわ」と言いながらクリスティーヌは鏡へと向かうと、クリスティーヌと鏡に映った姿が近づいて一つになった。ラウルがクリスティーヌを捕まえようと腕を伸ばすと、パッとクリスティーヌは消えてしまった。2日後、クリスティーヌは金の指輪をはめていた。クリスティーヌは指輪のことは話そうとしなかったが、ラウルに秘密の婚約を提案した。ある時、地下に降りようとしたラウルにクリスティーヌはあの人が閉じこもって作曲をしている、地下に降りてはいけないと制した。クリスティーヌはラウルに明日最後に歌を聞かせて公演が終わる12時に迎えてきて、一緒に逃げようと言った。クリスティーヌは3か月前に姿は見えないけれど素晴らしい歌声が聞こえてきて話かけて来た時にそれは父が言った“音楽の天使”だと思い、以来、楽屋で厳しい練習を受けてきたことを告白した。そして仮面の怪人は自らをエリックだと名乗った。そしてエリックはクリスティーヌを騙したことを告白し、20年も作曲に取り組み、完成したときに死ぬと言い、他のオペラ曲を歌い始めた。エリックの仮面をむしり取ると、ドクロの顔をして悪魔のような怒りを表していた。エリックに2週間閉じ込められたが、必ず戻ると約束してクリスティーヌは地上に戻ってきたということをラウルに伝えた。指輪を屋根の上で亡くしたクリスティーヌはエリックから指輪を無くせば不幸がやってくると言っていたのを思い出し、探し回ったけれども見つからなかった。クリスティーヌは舞台で素晴らしい歌声を響かせたが、照明が一瞬消えると、クリスティーヌは消えてしまった。

3ヶ月後、オペラ座で仮面舞踏会が開かれた。ファントムの噂話もなくなり、人々はすっかり恐怖を忘れてパーティーを楽しんでいた。しかし、ドクロの仮面をつけた赤いマントのファントムが現れ、会場が騒然とする。「歌がうまくなりたいなら、音楽の天使のもとに戻れ」という問いかけに、クリスティーヌは魂が抜かれたように彼に近づいた。ラウルはクリスティーヌを探したが、ペルシャ人に呼び止められ、エリックの下に連れて行くという。クリスティーヌの楽屋の壁の大鏡回転ドアのように回って暗闇を通り、2人はピストルをかざしながら地下に向かった。オペラ座の地下には地下水が湖のように溜り、壁が2重になっていてエリックの秘密の家はこの壁の間にあった。エリックは天才的手品師で2人は拷問室に落ち込んでしまった。壁1つ挟んでクリスティーヌがいたのが分かりラウルはクリスティーヌに声をかけ、縛られていたクリスティーヌの紐を解いてもらって3人一緒に抜け出そうと相談した。エリックが戻ってくるとクリスティーヌは紐を解いてもらい鍵を手に入れたがエリックが隣の拷問室にラウルがいることに気づき、拷問室の中を熱帯のように熱くし始めた。ようやく逃げ出すと今度は火薬庫の部屋に迷い込んだ。エリックはクリスティーヌが結婚を承知するならブロンズのサソリを、拒否するならブロンズのバッタを回すように言い、バッタを回せば火薬後が爆発して全員死ぬという。クリスティーヌがサソリを回すと、火薬庫に水がどんどん入ってきて2人は意識を失ったが命は助けられた。クリスティーヌはエリックに口づけすると、エリックはもうじき死ぬ、母でさえ嫌って口づけをしてくれなかったのにクリスティーヌが口づけをしてくれたことで涙を流した。そしてクリスティーヌが亡くした指輪を、エリックはラウルとの婚約指輪としてプレゼントした。3週間後、ペルシャ人はエリックは死んだとの訃報を2人に届けた。