鬼神の如く 黒田叛臣伝 葉室麟

2015年8月20日発行

 

2016年司馬遼太郎賞受賞。

栗山大膳(利章)は、初代藩主黒田長政の父、黒田官兵衛に若年の頃から仕えた黒田二十四騎のひとり栗山利安(善助)の子である。福岡に入部後、利安は家老となり、一の老職と呼ばれる。利安は官兵衛に尽くし、子大膳も黒田長政から信が厚かったが、二代藩主忠之は凡庸で口煩い大膳を遠ざけた。当時幕府は熊本藩加藤家や福岡藩黒田家を虎視眈眈と狙い、加藤家は改易に伴い消滅した。秀吉の軍師竹中半兵衛の流れをくむ竹中采女正(長崎奉行)は、老中・土井利勝の下で、福岡藩取り潰しのために暗躍し、一人大膳は黒田家の行く末を案じていた。そうした状況にあって、大膳は、二代藩主忠之に謀叛の企てありと訴える文書を竹中采女正に差し出した。焦点は神君家康公の関ヶ原感状にあった。家光はこれを取り戻そうとし、大膳はこれを切り札に福岡藩存続を図ろうと装った。周りは大膳に完全に誑かされ、大膳の真の狙いは竹中采女正の不正を詳らかにするところにあった。忠之に謀叛の企てがあると詐言を弄した真犯人は明らかになり、江戸での裁決で福岡藩は取り潰されることなく、一旦所領を召し上げるものの新たに筑前国拝領された。要するに減封もなくそのまま存続することが決まったのである。大膳は陸奥国盛岡藩預かりとなる。最後に三代将軍家光の前で調伏曽我の能を舞い、ルソン出兵を留まるよう大膳の命懸けの声は最後の最後で家光に届いた。竹内采女正の行き過ぎたキリシタン弾圧に抵抗すべく天草の乱が起きた。

 

想像の産物とは言え、めちゃくちゃ面白いストーリーを考えるものですね。葉室さんの若すぎる死は確かに悼まれます。