お嬢さん 2016年 監督パク・チャヌク

原作:ウェールズ作家サラ・ウォーターズ小説『荊の城』

ガーディアン「21世紀 最高の映画100本」で41位に。第53回百想芸術大賞で大賞受賞。

 

【第一部】1939年、日本統治下の朝鮮半島にあった上月家の大きな屋敷にやってきた珠子(キム・テリ)は、侍女長の佐々木夫人(キム・ヘスク)に案内され女中部屋に通され、以来、屋敷のお嬢様秀子(キム・ミニ)の身の周りの世話を始めた。珠子の本名はナム・スッキ。若くて綺麗な女中だったが、正体は詐欺師集団の一味で、元々は遺児を日本人に売る仕事をしており、ある目的で貴族の上月家に送り込まれた。上月は書籍愛好家として有名だが、財産は全て姪秀子の物で、上月は秀子の後見人に過ぎなかった。秀子は両親を幼い時に失くし、伯父の上月に引き取られた。藤原伯爵を名乗る詐欺師(ハ・ジョンウ)は、珠子の手引きで資産家の秀子との結婚を企み、秀子の母が上月の死んだ妻の姉で、上月が姪の秀子と結婚する魂胆だったため、それを妨害し、自分が秀子と結婚できるよう珠子に協力させ、財産を手に入れたら秀子を病気の女に仕立てて施設送りにする計画で珠子を引き込んだ。珠子は、藤原伯爵に財産が入れば報酬だけでなく自由の身になれると考え、秀子が藤原伯爵を愛するよう仕向け、秀子のいう通りによく働いた。予定通り藤原伯爵が上月邸に現れた。しかし若くて美しい秀子に魅力を感じるようになっていた珠子は、秀子が伯爵の手に堕ちるのに嫌悪感を抱くようになる。秀子は上月邸から一歩も出たことのない籠の鳥のような生活を送っていた。秀子は珠子にもドレスを着させたりして、とても可愛がっていた。藤原伯爵は秀子に、上月が仕事で家を開ける隙に一緒に逃げて結婚しようと持ちかけ、秀子は珠子を連れいくことを条件に上月邸を脱出して、藤原伯爵と一緒に日本に渡り、結婚式を挙げた。初夜を迎えた秀子は、翌日、白いシーツの上に鮮血を散らした。秀子は藤原伯爵の計画通り精神病院に入所する運びとなり、珠子は付き添った。病院に着き、身柄を押さえられて入院させられたのは何と珠子だった。

 

【第二部】

秀子は幼い頃に上月に引き取られた。上月は秀子が何か仕出かすと、容赦なく折檻し、恐怖で秀子を支配した。秀子は春本の朗読のため、叔母(秀子の母の姉)から、嫌らしい言葉を幼い時から覚えさせられた。秀子の叔母はある日、首吊り自殺した。上月は富豪の好事家を呼び、秀子を皆の見世物にし春本を朗読させた。富豪たちも俯せになりムチ打たれて快楽を楽しんだ。その参加者の一人が藤原伯爵だった。藤原伯爵は秀子に“あなたはここから出たい、私はあなたの持つ財産がほしい。どうです、私と駆け落ちして日本に逃れては”と持ちかけ、秀子は自分の身代わりの若い女を秀子に仕立て施設に放り込む計画を立てた。それが珠子だった。しかし秀子が、健気で可愛い珠子に次第に惹かれ始め、2人はレズビアンの関係に発展した。上月が書庫に秘蔵していた春本や春画を秀子が読まされていたのを知った珠子は、これらの本を次々に破り捨て、2人は鳥籠から逃げ出した。そんな過去を回想しながら、再び病院の前に場面が戻り、珠子が秀子の身代わりに連行されて行った。

 

【第三部】

珠子と入れ替わった秀子は、これからはスッキとして生きるよう、伯爵にパスポートを用意してもらい、帝国ホテルで伯爵と食事をした。秀子は濃縮アヘンを飲ませようとしてワイングラスに混入させて伯爵の前に現れた。伯爵はワインに口をつけないため、口移しでワインを飲ませた。伯爵は “女というものは力づくの関係で快楽を得るのです“と言いながら襲い掛ろうとしたが、薬が効いて意識を失った。秀子は荷物を持ち出して伯爵の下から逃げ出し、珠子は病院の火事騒ぎのどさくさで脱出に成功して2人は再会した。伯爵は屈強な男2人に捕えられて車で上月邸に運ばれた。秀子は上月に手紙を送り、藤原は賤民の息子で伯爵でも何でもない、更に現実の世界では力づくの関係では快楽は得られない、と朝鮮語で藤原に伝えて貰いたい、スッキを選んで送ってくれてありがとうとも伝えてくれと書き送った。上月は藤原の指を1本ずつ切り落として拷問にかけ、秀子との初夜の様子を根ほり葉ほり聞き出した。藤原は一服させてくれと懇願し、シガレットを吸い始め、藤原は初夜のことを明かした。上月の追手が秀子とスッキを追いかけたが、珠子は秀子を男性に変装させ神戸脱出に成功し、新天地ロシアに向かった。藤原が吸ったシガレットには水銀が仕込まれており、気化した猛毒の水銀を吸い込んだ上月が息絶え、藤原も美しい秀子を思い返しながら絶命した。船内では2人は室内で全裸で愛し合った。