羽生結弦 あくなき挑戦の軌跡 満薗文博

2018年4月 初版第1刷発行

 

「彼は確かに天才です。ただ、人一倍の努力をする、それができるという意味でも天才です(阿部奈々未コーチ)」

2018年2月17日、ソチオリンピックに続いて平昌オリンピックの連続金メダル。しかも前年に大怪我をしてそれを乗り越え、演技終了後に氷上で前かがみになって右足首にそっと両手を持っていった姿は誰もが印象深く記憶に残っていると思います。

ソチに続いて平昌での連覇を果たしたのは、ソチでは満足のいく演技ができなかったからで、更なる高見を目指した結果だった。前年の大けがからの復活劇でもあったことで最高の感動を呼んだ。

東日本大震災の被災地の一つである宮城出身で、17歳で出場した世界選手権で銅メダルに輝いた。震災後1年あまりで世界のハニュウになった彼は「被災地や日本に元気や勇気を届けるのではない。逆なんだ。みんなの応援や励ましが僕を支えてくれている」という気持ちで舞台に立ったという。

日本女子で初めて金メダルを獲得した荒川静香さんと、日本男子で初めて金メダルを取った羽生結弦選手との間に共通点があることは本書で初めて知りました。同じ東北高校早稲田大学(羽生さんは通信教育課程に籍を置いているとのこと)で、震災で行き場を失った羽生選手をアイスショーに引っ張り出し、練習場所の確保を手助けしてくれたのが荒川さんだったことも。

最後に、羽生選手の家族は表に出てこないことについて、これは、ご家族が「頑張ったのは息子。親が出ることはない」という信念の持ち主だと紹介されていました。羽生選手が平昌後に「本当に大変だったから、家族やチーム、育ててくれたコートや担任の先生、支えてくれた方を含め、いろんな思いがこみ上げてきました」とあいさつした際に真っ先にあげたのが「家族」だったのは、とても甚深の意味があったんだと改めて気づかされました。

東京2020も終わり、いよいよ2022北京。新たなドラマが既にきっと始まっているんだと思います。