クリスマス・キャロル C.ディケンズ 訳/小池滋

1985年12月10日 1991年12月4日第1刷発行 1994年11月10日第2刷発行

 

主人公スクルージは、冷酷で無慈悲な守銭奴として、人々から忌み嫌われている初老の老人。

無二の親友だったマーレーの亡霊に脅かされる第1章、過去を司る精霊が登場する第2章(スクルージの青年時代に連れていかれ、婚約者から金もうけの欲に懲り固まって人柄が変わってしまったとなじられる場面が登場)、現在を司る精霊が登場する第3章(スクルージの事務員クラチット家でクリスマスパーティでにぎやかで楽しそうにしている場面が登場)、未来を司る精霊が登場する第4章(人々に散々悪口を言われる人の墓石に刻まれていた名前を見るとスクルージと刻まれている場面が登場)を通じて、主人公が心を入れ替えて、人々にやさしくする第5章という構成からなる小説。

解説「ディケンズのファンタジー」(松村昌家)によると、ディケンズの死が伝えられた時、ある子どもが「サンタクロースのおじさんが死ぬってことがあるの?」と尋ねた、といわれるくらい、このクリスマスキャロルで、ディケンズの名はクリスマスと結びついて高らしめられたそうだ。

空間を飛び、過去、現在、未来と、タイムマシンさながらに、ファンジー的空間に読者を誘い、人道的で、クリスマスを大事にする著者のホットな心に触れると、思わず安堵する作品だと思います。