NHK100分de名著ブックス 人生の意味の心理学 変われない?変わりたくない? アドラー 岸見一郎

2018年6月25日第1刷発行 2020年11月30日第7刷発行

 

帯封「人生は、変えられる。-それを妨げているものの正体を見つめよ。わたしたちは自分が『意味づけ』した世界を生きている。意味づけを変えれば、過去さえ変わりうる。」「いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。われわれは(中略)自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって、自らを決定するのである。(岸見一郎訳『人生の意味の心理学』第1章より)

 

他者への関心を持っている人だけが他者に貢献しそうすることで貢献感を持つことができる。この共同体感覚がどのような感覚か。①自己受容、ありのままの自分を受け入れる。自分に価値があると思える時だけ、勇気を持てる。だから自分に価値があると思えたらそのような自分を受け入れることができる。だから対人関係の中に入っていく勇気が必要だ。②他者貢献、自分が役立たずではなく、役に立てている、貢献していると感じられる時に、そんな自分に価値があると思え、自分を受け入れることができる。誰もが「存在レベル」で貢献できることを忘れない。③他者信頼、他者を仲間として信頼できなければ他者に貢献しようとは思わない。

アドラーは叱ることも褒めることも認めない。いずれも上下関係を前提にするからだ。アドラーは対等関係であるべきだと考える。褒めるのではなく、ありがとうと声をかけることで貢献感が生まれる。しかし承認欲求に繋がるようなありがとうという声掛けには注意が必要である。

 天才とは、新しい自明性を創り出す能力のことである(ベルナール・グラッセ)。

 「優越性の追求」「劣等感」はいずれも他者との比較からではなく「理想と現実の自分との比較から生まれるもので、誰にでもあり、「健康で正常な努力と成長への刺激である」とアドラーは考えている(『個人心理学講義』)。

 人間の価値を生産性に求めることは間違いである。生きることとは「進化」ではなく「変化」である。トルストイの「万物は流転する」の言葉。

 鶴見俊介は「敗戦当夜、食事をする気力もなくなった男は多くいた。しかし、夕食をととのえない女性がいただろうか。他の人とおなじく、女性は、食事をととのえた。この無言の姿勢の中に、平和運動の根がある。」といっている。

 

 最後の鶴見俊輔の言葉が、一番印象的だった。