1991年7月30日第1刷発行 1992年6月20日第1刷発行
巻末の久野収による「解説=テキストを読む 20世紀人間の具体的人相書き」を読んで、本書が言いたいことが何なのか分かったような気がする。
「『大衆の反逆』は、現代ヨーロッパの思想伝統のなかで、これまで省略されすぎていた19世紀を正面から捉え直す試みである」「19世紀の文明は、『大衆』人間が過剰の世界に安住することを可能にする文明であった。彼らは、そこでありあまる手段、素晴らしい道具、卓効ある薬、豊かな便宜、快適な権利に取り囲まれて、そこの底辺にひそむ苦悩はもちろん、それらを発明し、それらを将来に保証する仕事がどれほど困難であるかにも目をつむっている。『自分がしたいことをするためにこの世に生まれあわせて来た』とする傾向。だから『したいことは何でもできる』とする信仰は、自由主義の自由の裏面、義務と責任を免除してもらう自由にほかならない。われわれわれは自由主義の生み出した、この『大衆』人間的自由、自己中心的自由に対し、他者と共存する義務と責任をもった自由を保全しなければならないが、一筋縄でいかないのは、この仕事である」というのがオルテガの言いたいことのようだ。
私は、まだこの難解な本を通読するほどに強靭な頭脳を構築するに至っていないことを痛感させられる。まだまだ勉強不足だ、本当に。