堀田力の「おごるな上司!」人事と組織の管理学 堀田力(その2)

1994年11月21日第1刷 1995年12月11日第24刷

 

上司のランク

よい上司・悪い上司。

1、褒めるべきときに褒め、叱るべきときに叱る上司。

2,褒める必要のないときにまで褒め、叱るべきときも叱らない上司。

3、褒めもしなければ、叱りもしない上司。

4、褒めるべきときに褒めず、叱る必要のないときに叱る上司。

 とくに、完璧主義者で自らの職人的な有能さに自信を持ち、部下だった時代から優秀な成績をおさめてきた人が、ときとしてこういう上司にある傾向があります。自分以外の者がみな劣って見えるから、年がら年中、叱ってばかりいる。こういう人は、自分がなんのために叱っているのか、まったく理解していないわけです。部下を育てようという気から叱っているのではなく、ただ自分の優越性を誇示したくて感情のおもむくままに叱っている。

 

賞罰

 悪いことをしたとき、懲戒処分をすることは必要である。よくことをしたとき、人事上、処遇することは、もっと必要である。

 

上司の落とし穴

 管理者には、部下の仕事を自分でしていたほうが、気がまぎれるし、安心でもあるーという落とし穴がある。管理者は、雑用をして仕事をした気になっていてはいけない。

 

上司を褒める

 部下を褒めることは大切なことだが、上司を褒めることは、そんなに大切なことではない。

 

上司にへつらう

 へつらう人が減らないのは、へつらう人を重用する人が減らないからである。

 

上司の意向

 上を向いていると、下が見えない。下ばかり向いていると、前が見えない。

 

意思疎通

 仕事の方向に関する上司の意向を知ることは、部下の意向を知ることより大切である。部下に状況を知らせることは、上司に状況を報告するのと同様に大切である。

 

劣る部下

 自分より劣る部下には、その部下のレベルで話をしなければならない。

 

若い人の意見

 若くない人が若い人の意見を聞くことは、大事なことだが、実際のところ、手間と工夫が要ることが少なくない。だから、たとえば、朝、職場へ出る際に、「若い人の意見を聞くこと」と自分に言い聞かせ、そのための方法を考えてみるのも一法であろう。

 

批判

 行動を伴わない批判は、偽善よりも悪質である。自己を正当化するために行なう批判は、偽善に等しい。

 

批評家

 仕事の改善策が出されたとき、ただちにその難点を指摘して、したり顔をする人がいる。それだけしかしないなら、そんな人はいないほうがいい。

 

会議での発言

 部下の意見を忘れて、会議の大勢に従う人は、信用されない。しかし、会議の場で部下の意見を主張していれば足りるというものでもない。自らを生かしつつ、高い視野に立って他の部署との適切な協議を図るのが、一つの部署の長たるゆえんであろう。

 

不平不満

 不平不満は、まわりの心を汚す。それには、ストレス解消というプラス効果があることを計算に入れても、許容限度がある。ヒラ社員について言えば、洩らす不満がその人の力量の半分を超えるときはマイナスと判断してよい。この許容限度は、組織における地位があがるにつれ、厳しくなる。部長以上の地位になれば、許容限度はゼロと見てよい。

 50人の部下を抱える管理者が不平不満を口にすれば、たちどころに50人の部下を腐らせ、これはもはや組織としては壊滅的なダメージとなります。だから不平不満を言ってはいけない。つまり、許容範囲はゼロ。

 

士気

 士気の基本は、まずもって、健康である。そのことは、二日酔いをしてみればわかる。

 

資産と負債

 一日一日の仕事を積極的に、あるいは適切にやり遂げることにより蓄積されていく人の信頼感は、生涯の資産である。一日一日の仕事を怠惰に、あるいは不適切にしか行なわなかったことにより蓄積されていく人の不信感は、生涯の負債である。

 

やめる

 やめることは簡単である。ただし、間違っていることをやめるには、ちょっと勇気がいる。

 

楽なやり方

 楽なことは、あっという間に慣れる。

 

勲章

 勲章は、人生の集約である。勲章を受ける態度は、人格の集約である。

 

おごるな上司

 権限の力を自分の力と思い誤ったときから、堕落がはじまる。

 

かれこれ30年近く前に一度読んだ本だったが、改めて読み返してみて、当たり前のことが書いてあるけれども、なるほどなあと感心するくだりもあったりする。検察の世界でトップにまで上り詰めることのできた人のように思ったが、トップに上り詰めなかったのはなぜだったんだろうか?