ロビンソン・クルーソー ダニエル・デフォー作 海保眞夫訳

2004 年 3 月 16 日発行


 ルソーの『エミール』に、子どもに最初に読ませたい本として挙げられていた『ロビンソン・クルーソー』。無人島での冒険物語的な内容だったかなということしか覚えていなかったが、読み返してみて、グイグイ引き込まれてしまった。
 前半は無人島に一人で生活しなければならない主人公が、島と難破船との間を行き来して必要なものを手に入れ(銃や弾、火薬など)、さらに智慧を使って、農業じゃないけど麦を育ててパンを作り、ウミガメやヤギなど、動物も少しずつ手に入れて、バターやチーズを作り、また動物の毛皮で帽子や衣類の代用とする、まさにサバイバル生活を送る姿がビジュアル的に詳細に描かれている。
 後半は、この無人島に蛮人がやってきて、捕虜を殺して人肉を食べるという、とんでもない光景を見た主人公が、蛮人を倒すとともに捕虜を部下にして言葉を教え、人との交流が始まる。そしてこの島に海賊たちがやってきて、主人公は部下とともに、海賊たちをやっつけ、捕虜となっていた船長を助けて、遂に島を脱出する手がかりを掴み、とうとう島を脱出する。何と、この島に 27 年以上もの間、主人公はいたことになる。
 この物語で、主人公は聖書を読み、神への感謝が自然のうちに言葉になり、捕虜を部下にした後は更に聖書を勉強し、脱出できたのも神のお陰であると捉えているところに、キリスト教の強い影響を感じた。
 ところで、主人公は脱出後、財産を築き、再び冒険心に燃えて、この無人島に戻るという話で終わるのだが、なぜ無人島に戻るという結末にしたのだろうか。
 それにしても、デフォーの筆はさえわたっている。今から 300 年以上も前の小説とは到底思えない(1719 年 4 月に出版)。セルカークの体験記を素材にしている、とあったが、ネットで調べると、この小説はデフォーの創作であって、セルカークとは関係ない、とする見解もあるようだ。いずれにしても、ルソーが子どもに最初に読ませたいというのも分かる気がする。仮想の世界の中に子どもを飛び込ませ、イマジネーションをどんどん膨らませるという点では、またグイグイと読者を引きずり込むという点では、本の面白さを存分に味わうことができる作品だ。世界的に名作と言われる書物は、本当に若い頃にこそ、沢山読んでおいた方がよいと言われるが、この本を読んで改めて一層強くそう思った。