レディ・ジョーカー(中) 高村薫

平成22年4月1日発行

 

裏表紙「城山は、五十六時間ぶりに解放された。だが、その眼は鉛色に沈んだままだ。レディ・ジョーカーを名乗る犯行グループが三百五十万キロリットルのビールを“人質”に取っているのだ。裏取引を懸念する総会っ課長に送り込まれた合田は、城山社長に影のごとく付き従う。事件が加速してゆく中、ふたりの新聞記者は二匹の両県と化して苦い臭跡を追う。-カオスに渦巻く男たちの思念。」

 

警察には6億要求されたと説明する一方で、社に戻った城山は役員会で20億円要求されていることを告げる。東邦新聞の根来記者が昭和22年の日之出麦酒での差別問題に取材を始める中、他紙が平成2年に送られてきた日之出宛の謎のテープをスッパ抜く。大森署の合田警部補は特命で日之出ビールに派遣され、秘書として城山を警護しながらも観察を続ける。6億の現金要求するも現金受け渡し場所には誰も現れないが、東邦新聞がこれをすっぱ抜く。次は7億の要求だったが、この時も前回同様受け渡し場所に犯人は現れない。犯人と城山との接点は城山の自宅近くにある街頭に貼られた白いビニールテープだった。それを朝の通勤途中で見かけたらその日の午後9時から9時5分の間に指定された番号に城山が電話するという犯人と城山しか知らないルールが出来た。ところが3回目の白テープは近隣の者がはがしてしまい城山の目に止まらなかった。合田は朝城山宅に行くときにあった何かが次にそこを通ると無くなっているのに気づき、白テープは城山に宛てた犯人の合図だと気付く。犯人のルールを破った城山に犯人は日之出ビールに異物を混入する事件を起こし報復する。警察は誘拐当日の夜勤で無線を聞いていた4人の刑事に目星をつける。合田はそのうちの一人が半田であることを知り、以前から半田の眼が気になっていたことと合わせて胸が騒ぐ。東邦新聞の久保記者は清三が営む薬局店に飛び込む。店の奥の部屋に機械臭のする男がいたこと以外は目新しい発見はなかった。が店を出るときに警察の行確対象となっていることに気付く。そして遂に3度目の白テープを見つける。定例の午後9時過ぎの電話を掛ける直前、合田は城山に電話番号を教えて欲しいと頼むが城山は拒否し、明日からお役御免を申し渡す。定例の電話で犯人は20億を用意させる。深夜、城山は個人の判断という断りを入れて電話番号を合田に伝える。東邦新聞の根来記者に週刊誌記者の佐野がビックニュースを伝える。一つは3度目の要求があったこと、もう一つは週刊誌に東邦元記者という偽の肩書を使った戸田義則と名乗る人物が警察から捜査情報を漏洩させていたため漏洩した刑事が懲戒免職となったことだった。戸田とは東邦社会部の元記者菊池武史で闇の世界とも繋がりがあり仕手戦を仕掛ける現ジーエスシーの代表だった。指定された現金受け渡しの当日、受け渡し場所に現れたのは犯人ではなく、犯人に人質を取られた身代わり犯人だった。翌日犯人から20億の送付先を指示するメールが届く。杉原が深夜城山宅の周りを歩き回る姿を合田が認めて声をかけるが、そのまま立ち去る。その2時間後の深夜、品川駅ホームから飛び込み自殺する。