レディ・ジョーカー(上) 高村薫

平成22年4月1日発行

 

裏表紙「空虚な日常、目を凝らせど見えぬ未来。五人の男は競馬場へと吹き寄せられた。未曾有の犯罪の前奏曲が響く―。その夜、合田警部補は日之出ビール社長・城山の誘拐を知る。彼の一報により、警視庁という名の冷たい機械が動き始めた。事件に昏い興奮を覚えた新聞記者たち。巨大企業は闇に侵食されているのだ。ジャンルを超え屹立する、唯一無二の長篇小説。毎日出版文化賞受賞作。」

 

昭和22年、日之出麦酒に解雇された岡村清二は同様に解雇された者には部落問題があったことを会社宛に手紙で伝えた。

平成2年、歯科医である秦野浩之の息子・孝之は日之出ビールに内定をもらっていたが、取り消される。日之出に抗議した秦野の父親の前に、総会屋の西村が昭和22年の岡村清二の手紙のコピーを持って現れる。差別問題は企業にとって都合の悪い問題。西村は秦野に日之出に強請をかけろと暗に助言する。秦野は義父物井清三に連絡し、兄岡村清二が実在することを聞く。娘の婚約者である孝之が被差別部落出身者であることを身辺調査の結果で知った日之出の役員は娘に結婚を諦めてくれと告げると、娘は孝之が日之出の就職試験を受けたことを知らずに部落問題のことを口にしてしまう。その後、孝之は交通事故で亡くなる。孝之の父浩之の妻美津子は主人公物井清三の娘。美津子は父清三に、美津子が結婚する際に相手の浩之の戸籍を親の清三が調べておくべきだった、それを怠って浩之の素性を知らずに結婚した自分は被害者だ、孝之の婚約が破談になった理由も恐らく戸籍が原因で、そのショックで孝之が交通事故で亡くなったと清三と喧嘩する。直後、浩之は小田急線に飛込み自殺する。

岡村清二の実弟で70歳の物井清三は「日之出ビール」の問題を知り、平成6年、身内の仇の日之出ビールから大金を奪うことを思いつき、競馬場仲間に声を掛けると、障害を持ったレディの面倒を見ているトラック運転手の布川淳一、蒲田署の半田修平巡査部長、信用金庫職員の高克己、旋盤工の松田陽吉の4人が集まり、半田は物足りない何かを求めて作戦を練っていく。4人のチーム名は「レディ・ジョーカー」。

平成7年、日之出ビールの城山社長が誘拐される。警視庁は大森署に99人体制の本部を置く。1課は特殊犯係や機動捜査隊を待機させ、2課・4課は総会屋・暴力団関係の捜査等を進めた。が、身代金要求より先に社長は解放される。警察に説明する内容を指示され、その通りに説明する社長。だが社長には表に出せない別の指示が下っていた。