家康、江戸を建てる3⃣ 門井慶喜

2017年5月31日第1刷発行

 

第四話(続き)

石積みの親方である見えすきの喜三太は、石をどのように積み上げればよいかを見極める名人。吾平は若き喜三太の才能に惚れ惚れする。天下一の巨石を大船を使って喜三太は江戸に運び入れたが、一目見て吾平は石を切って喜三太が大手門の鏡石とし、残った石を鏡石のまわりに配したことを悟った。吾平は報われたと思ったのか、それとも失望したと思ったのか。

 

第五話「天守を起こす」

家康に命じられて大工頭の中井正清は江戸城天守閣を作りあげた。家康は秀忠に城の壁を白壁にするようにと命じるが、そもそも天守閣は必要ないのではないかと二代将軍秀忠は主張して対立する。家康が天守閣にこだわった理由の一つは大名に経済的負担を掛けることにあったはずなのに、黒壁より白壁の方が負担は軽くなるため、秀忠は家康の考えが理解できなかった。が、ある時、白一色の天守とは平和を示し、いくさは終わったことを天下に宣言して天下万民を安心させるためであることを秀忠は悟った。それに対して家康は半分は正しいが、半分は死者のために白御影の墓石と思いねんごろにせよという。50年後、天守閣は振袖火事の為に全焼し再び建てられることはなかった。

 

2016年上半期の直木賞候補になった作品。