蒼穹の昴1 浅田次郎

2004年10月15日第1刷発行 2010年2月2日第16刷

 

裏表紙「汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう-中国清朝末期、貧しき糞拾い少年・春児は、占い師の予言を信じ、科挙の試験を受ける幼なじみの兄貴分・文秀に従って都へ上った。都で袂を分かち、それぞれの志を胸に歩み始めた二人を待ち受ける宿命の覇道。万人の魂をうつベストセラー大作!」

 

第一章 科挙登第

科挙の本試験に進む資格が与えられるまでの道のりは大変だ。

四書五経を諳んじ、詩作を学び、政策論を述べるに必要な歴史や故事を学び尽くして、第一関門「県試」、続く「府試」、「院試」に合格して、初めて科挙の本試験に進む資格が生まれ、「正員」となる。そして「歳試」「科試」の学力判定試験を繰り返して淘汰されたのち、3年に1度だけ行われる、科挙の第一次試験「郷試」(競争率100倍)に向かい、最後に全国の挙人2万人余が北京貢院に会して実質的な科挙の本試験「順天会試」に臨む。

第1巻の冒頭は、文秀の御供で都に上った春児が宦官トップに出会い自ら同じ道に進もうとしたので、文秀が宦官になるための生々しい現場を春児に見せる。文秀は占い師にいわれたように孔子が乗り移ったかのような最高の答案を会試で提出し、試験官の中でも最優秀の楊喜楨からも認められて主席で合格する。

第二章 乾降の玉

清朝六代乾降帝は皇子時代に絵師で耶蘇教の修道僧カスリチョーネから贈られた望遠鏡を覗いて地表が丸いと気付く本当の天才として描かれ広大な帝国を築き上げる。ジュンガルを討ち滅ぼした地から美しい香妃のためにイスラム教の文物を取り入れて歓心を引こうとしたがその努力もむなしく香妃は美しいままに死す。禁忌を破りカスリチョーネと兆恵将軍を堂子に招き入れ龍玉を見せて胸に抱いた乾降帝の思いは「天下は虚しい」であった。

再び楊が登場する場面に切り替わると、楊先生は3人の若い文秀・順桂・王逸を前にして、乾降帝は宗教や思想や言論のすべてを政治軍事に優先するものとして公式に編纂し記録されたことは古今東西いずれの君主もな偉業であり、その乾降帝の考えた未来とは逆に向かっている世の中を変えるのは若者の勇気と情熱であると諭す。自らの手で去勢した春児は家を出て彷徨う中で安徳海と再会し、廃人となった宦官が住む富貴寺に連れて行かれる。そこで京劇で天下一の役者だったが癩病に罹った黒牡丹と出会い西太后の前に出仕する道を得る。