パチンコ《上》 ミン・ジン・リー 池田真紀子[訳]

2020年7月30日第1刷

 

帯封「アメリカで100万部突破。オバマ前大統領、推薦。夫ではない男の子供を宿し、彼女は日本に渡ってきた-壮大な物語が、ここからはじまる。四世代にわたる在日コリアン一家の苦闘を描いて全世界で共感を呼んだ大作、ついに日本版刊行成る!」

表紙裏「《全米図書賞》最終候補作。世界各国でベストセラーとなった在日コリアン四世代を描く圧巻の長編小説、ついに翻訳成る! 四世代にわたる在日コリアン一家の苦闘を描いて全世界で共感を呼んだ大作、ついに日本版刊行成る!日本に併合された朝鮮半島、釜山沖の影島。下宿屋を営む夫婦の娘として生まれたキム・ソンジャが出会ったのは、日本との貿易を生業とするハンスという男だった。見知らぬ都会の匂いのするハンスと恋に落ち、やがて身ごもったソンジャは、ハンスには日本に妻子がいることを知らされる。許されぬ妊娠を恥じ、苦悩するソンジャに手を差し伸べたのは若き牧師イサク。彼はソンジャの子を自分の子として育てると誓い、ソンジャとともに兄が住む大阪の鶴橋に渡ることになった…。1910年の朝鮮半島で幕を開け、大阪へ、そして横浜へ―。小説というものの圧倒的な力をあらためて悟らせてくれる壮大な物語。構想から30年、世界中の読者を感動させ、アメリカ最大の文学賞・全米図書賞の最終候補作となった韓国系アメリカ人作家の渾身の大作。」

 

第1部 故郷 1910-1933

夫亡き後、ヤンジンは娘のソンジャと漁村で宿屋を経営していた。ソンジャは真面目な少女だったが、コ・ハンスが妻帯者と知らずに彼の子を身籠る。結核で倒れてこの母子に看病してもらった牧師イサクはソンジャを妻に迎い入れ、子を我が子として育てようと決め、2人はイサクの兄ヨセプいる大阪に移住した。イサクが教会から得る収入は殆どなく、実家を頼ることも出来ず、ビスケット工場の職工長として働くヨセプの収入が唯一の収入だった。ヨセプに多額の借金があることを知ったソンジャは、ハンスから貰った懐中時計を売り払って全額返済した。それを知ったヨセプは怒り狂い、ソンジャはその日に出産した。ヨセプはイサクに頼まれて男の子の名をノアと名付けた。

 

第2部 母国 1939-1962

ソンジャが次男モーザスを生んだ直後、イサクは神社の参拝を拒絶したとして逮捕されてしまい、ソンジャやヨセプはイサクと面会できない日が長く続いた。生活費を稼ぐため、ソンジャはヨセプの妻キョンヒが作ったキムチを路上で売り始め、これが美味しいと評判になり、鶴橋の高級焼肉店で出すキムチを作る仕事にもありついた。イサクの拘留は2年程続き、拷問の跡が残った体で釈放されるもすぐに死んでしまった。ノアは早稲田大学を目指して勉強に精を出したが、ソンジャの次男モーザスは兄と違って勉強が余り好きでなかった。イサクが亡くなると、ハンスがソンジャの前に姿を現した。懐中時計の一件以来、ハンスはソンジャを影から支えていたが、ソンジャは目の前に現れたハンスを許せなかった。それでもハンスはノアのため大阪が焦土と化す前に疎開するようソンジャに言い、ソンジャも已む無くそれに従った。