2003年11月20日発行
ビューティー・サロンのインターン篠原和子は、指名客を多く持つ男性美容師長沢信二と人知れず同棲していたが、マダムのパトロンになっている化粧品会社社長にある時呼び止められて、マダムが毎週土曜日に信二と逢引きしていると告げ口した。うまく行けば、社長がマダムと手を切り自分が後釜に回ってくるかもしれないし、パトロンが続いたとしても、マダムと信二の間を割いてくれるだろうと計算していた。ところが、信二の浮気相手はマダムでなく、社長の奥さんだった。マダムは髪留めの翡翠を上手に使い、社長の奥さんと信二との浮気を社長に知らしめ、社長を離婚させるのに成功すると自分が後釜に坐った。長沢は客と間違いを犯したことで店の信用を失墜させたとして馘になり、和子は長沢と別れて小さな美容院に住み込みで働いていた。
離婚契約書
キャバレー上がりの和子は芳夫からプロポーズされて間宮家に嫁いだ。和子は離婚する時は五百万を芳夫に払ってもらう約束の離婚契約書を作っていたが、間宮家には気に障る内容だった。間宮家は和子を召使のように扱い、離婚契約書を無効にしようと企むが、そんな矢先、芳夫が別の女と無理心中して死んでしまった。芳夫の財産は妻和子に行ってしまった。
陽射しの中
千枝子は夫と別居して5年。冠婚葬祭用の妻と呼ばれても構わなかった。ミス一つしない完璧な妻だったが、夫が恒子を連れて結婚式に参加したのが許せず、離婚を切り出した。その日夫に会った時にハンドバックを置き忘れした。離婚よりも重大なことだった。
ふたりぼっち
花柳界から除籍させ、家や土地をきむ子名義にした旦那は、きむ子の身の世話をくめ子に頼み、旦那が死んだ後もずっときむ子の面倒をくめ子は見て来て、かれこれ15年経過した。そんなくめ子をきむ子は追い出した。きむ子も、くめ子も親兄弟のない独り者だった。くめ子は唯一の血縁を頼って転居したが、肩身の狭いを思いをしていた。そんなくめ子をきむ子が迎えに行くと、雨の中をくめ子は駆け出して行った。
松風
能の世界で生きて来た家元の息子を映画の主役に抜擢した若手監督は、別のスター俳優に切り替えるのを拒み続けて家元の息子にこだわっていた。が、ある時、家元の芸を継ぐのは彼しかいないことに気が付いた。息子を捨てると言った家元の心に、映画屋の量見はうちのめされた。このまま映画に出演させれば他の水を飲んだ異質な人間として中途半端な形だけの能楽師となってしまう。若手監督は彼を諦めた。
華やかな死
ある日本舞踊の家元が青酸加里入り麦酒を舞台で飲み死亡した。他殺説から自殺説に切り替わったが、ある一枚の写真をきっかけに、家元に内弟子として入った女性が劇作家に宛てた手紙から内弟子が犯人だったことが判明する。内弟子はかつての許嫁を奪った家元への復讐を果たしたことを許嫁の親友だった劇作家に打ち明けたのだった。