日本人とユダヤ人 イザヤ・ベンダサン著

1970年5月10日初版発行 1971年5月15日23刷発行

 

 まずは、この本を真正面から一旦受け入れて読むことにしよう。

「あとがき」に、「互に交われば相互に理解できると単純に考えている日本人が余りに多い」とあるように、あるテーマで仮に同じ結論が得られたとしても、そこに辿り着く思考過程は国によって全く違うことがあり得るから、相互理解等と安直に考えるのを戒めている。

 冒頭の「1 安全と自由と水のコストー隠れ切支丹と隠れユダヤ人―」では、安全も水もタダで当然という感覚でいる日本人と安全にはコストが高くつくと考えるユダヤ人とを対比させ、地震・雷・火事・オヤジはどれも日本の一過性を表すものとしている。内なるゲットーと外なるゲットーと言ったユダヤ人国家の父ヘルツェルを引用して2000年以上も迫害の歴史を持つユダヤ人は議論好きだが日本と違って思いつめない、逆に日本は思いつめ集団であるが、それは安穏だからこそであると語っている。

 「2 お米が羊・神が四つ足―祭司の務めが非人の仕事―」では、日本のコメと西洋の羊は命の糧という意味では同じ、四つ足のけがれた動物を屠殺するのは日本では祭司の聖なる務めであった。アウシュヴィッツユダヤ人を思想というヴィールスを持った家畜であるとされたから焼き捨てられた施設であり、残虐行為ではないと考えられていた、という趣旨の記述があるが、これは果たしてどういうつもりの記述なのだろうか?

 「3 クローノスの牙と首―天の時、地の利、人の和―」では、人口85%農民の日本人は借入日時が決まっている以上、秒刻みの訓練を1千数百年にわたって訓練を受け続けてきたという、天の時、人の和を大事にしてきたのだから、遊牧民は日本人を理解できないし、日本人は遊牧民を理解できない、クロノス(時間)に殺されないために米を作り、米を作るためにクロノスに追いまくられる循環を繰り返してきた、そういうクロノスの牙と、クロノスの首に跳び乗って悠々としている遊牧民とを対比している。

 「4 別荘の民・ハイウェイの民―じゃがたら文と祝砲と西暦―」では、関ヶ原の戦いですら半日で終わる日本と常に戦場だったパレスチナを比較して、日本をお坊ちゃんと分析する。

 「5 政治天才と政治低能―ギカリヤの夢と恩田木工―」では、『日暮硯』の全文引用が長いが、要するに日本には人間相互の信頼関係の回復という基本的律法が根底にあり、それを外国人が理解することは困難である、それ故に日本を政治的天才とし、ユダヤ人を政治低能と規定する(ここは論理の飛躍が相当あるように思う)。

 「6 全員一致の審決は無効―サンヘドリンの規定と「法外の法」-」では、イエス時代のユダヤの国会兼最高裁判所のようなサンヘドリン(70人で構成)では全員一致の議決は無効とするという明確な規定があった。全員一致は偏見に基づくから免訴、あるいは興奮によるから一昼夜おいてから再審すべきということらしい。日本は反対で全員一致の議決は最も強く最も正しく最も拘束力があると考えられてる。その上で日本には人間的弁証法日本教の宗規があるという。すなわち決議は百パーセントは人を拘束せずという原則(法外の法)が日本にあり、法外の法とは人間味であるという。

 「7 日本教徒・ユダヤ教徒―ユーダイオスはユーダイオスー」「8 再び「日本教徒」についてー(その2)日本教の体現者の生き方―」、特に後者では氷川清話を引用しながら西郷隆盛日本教の生んだ偉大な殉教者であるが、人の生は短くやがて天に帰するから現世のことにのみ自己の生命を投入してはならないと考えた殉教であるから、終末が間近だから殉教できるというクリスト的宗教とは根本的な違いがあるとする。

 「9 さらに「日本教徒」についてー(その3)是非なき関係と水くさい関係―」では、ヨーロッパがキリスト教をうけ入れたとき、神を「契約神」(養子化した)と考え、律法を守りぬくことがイスラエル3千年の歴史を貫く根本的考え方であるが、日本では律法より人間味という日本人キリスト教徒はキリストの日本的理解とか聖書の日本的把握ということになり、両者は別物であるとする。

 「10 すばらしき誤訳「蒼ざめた馬」―黙示的世界とムード的世界―」は、ロープシンの「蒼ざめた馬」とヨハネ黙示録の引用が長く理解が難しい。最初の「狭き門」は聖書と日本語とではまるで意味が違っているという譬えの方が分かり易い(聖書では体をよじるようにして入れる門は全く目につかないからこれを見つける人はほんとわずかだという意味らしい)。

 「11 処女降臨なき民―血縁の国と召命の国―」では、冒頭で処女降臨で誕生した人間は1856人もいる、西方の有名人はイエスプラトン、東方は清朝の始祖で、前者は2000年以上にわたって2人の精神的支配を、後者は300年にわたって子孫の支配をうけたのだから面白い、反対にそんな人間の存在を絶対認めない民族としてはユダヤ人と日本人があるとする。マルコ福音書ヨハネ福音書の内容には処女降臨は書いていないという。ユダヤ人ではないルカに処女降臨伝説は始まるらしい。ルカにより記された聖胎告知や天使の祝福が教会の伝記となっている。

 「12 しのびよる日本人への迫害―ディプロストーンと東京と名誉白人―」は結局何がいいたいのか良く分からなかった。著者は全く異なるが、六草いちかの「いのちの証言:ナチスの時代を生き延びたユダヤ人と日本人」という本がタイトル的に似ていたので(恐らく内容は全く異なるであろうが)今度読んでみようと思う。

 「13 少々、苦情を!-傷つけたのが目なら目で、歯なら歯で、つぐなえ」では、日本人は殴られたら殴り返せという意味に取るが、原典から意味を忠実にとるなら、損害を与えたら他だしく損害賠償せよ、という意味である、とする。

 「14 プールサイダーーソロバンの民と数式の民―」では、日本人の思考の型はソロバン型で西欧人の思考の型は数式的である、したがって日本人は結論を出すのではなく、出る、とする。これを完全に習熟した人の、目にもとまらぬ早さで出したものが、いわゆる「カン」であろう、こういう場合、カンが出てきた過程を説明してくれといっても無理である、とする。

 「15 終わりにー3つの詩」では、『サムエル記』「弓の歌」、『イザヤ書』「苦難のしもべ」、『雅歌』を引用するが、なじみがなく、理解が難しい。

 ネットによると、イザヤ・ベンダサン山本七平ペンネームであるという説が有力で、発行当時300万部の大ベストセラーだったらしい。

獄中記  オスカー・ワイルド  田部重治=訳

昭和 25 年 12 月 13 日初版発行 平成元年 10 月 26 日 22 刷発行 平成 10 年 4 月 25 日改訂初版発行 平成 10 年 5 月 5 日改訂再販発行

 表紙裏には「同性愛の廉で罪に問われ、懲役 2 年の判決を言い渡されたワイルド。『獄中記』は彼が牢獄から同性愛の相手ダグラスに宛てた書簡集である。その内容と思索からは、芸術と実生活で唯美主義を実践した著者の『深淵からの叫び』が聞こえてくる。イギリス世紀末のデカダンスとダンディズムの指導者だった異端の文豪ワイルドが綴る、告白文学の最高傑作」とある。
 聖書、ダンテ『神曲』、シェークスピアを始めとして、古典的名作が随所に引用されている。これらの基本的知識がないと本書を理解するのは難しいように思う。
 「私は悲哀が人間の感得しうる最高の情緒であるので、それが、あらゆる偉大なる芸術の典型であり、同時に試金石でもあることを、いまにして知った」「悲哀に匹敵しうる真理はない」「私には悲哀が唯一の真理であると見えるときがある」「悲哀から数々の世界は作られた」「悲哀には或る強烈な異常な現実性が漂っている」「苦悩こそあらゆるものの背後に隠されているものである」、その上で「かほどまでに完全に悲しみと美とがその意味と表現とにおいて一体となりうるこのキリストの全生涯は、実は一篇の牧歌なのである」「生きているうちに、『自己の魂を自分のものにする』人々が余りにも少ないのは悲劇的なことである。エマスンは『いかなる人においても自らの行為ほど稀れな尊いものはない』と言っている。全くその通りである。大抵の人々は他人の生活をしている。彼等の思想は他人の意見であり、その生活は人真似であり、その情熱は他からの借り物にすぎない。キリストは最高の個人主義者であったばかりでなく、実に歴史あって以来の最初の個人主義者でもあった」「いずれにしても、私はただ、自己発展の途上をひたすらに進んで行くことができるのみである。そして自分の身に起こったことのすべてを快く受け入れ、それに値する自己を作ればよいのである」と述べる。

 この辺りにオスカー・ワイルドの精神的な強さと表現の巧みさが現れているように思う。

 

 

世界を変えた60人の偉人たち 新しい時代を拓いたテクノロジー 編者 東京電機大学(その2)

2019年7月15日第1版第1刷発行

 

第5章 第三次産業革命

ライト兄弟  動力飛行機を発明し、有人飛行に成功
「真実とされていることを前提に取り組んだら、進歩の希望はほとんどない」
ライト兄弟より先に飛行機の原理を発見したのは日本人の二宮忠八(1893 年、ライト
兄弟の 10 年前)。

ジョン・ロジー・ベアード  テレビジョンを発明
「無線で見ることができる機械を作った」 ベアードは新聞社に自分の発明を知らせよ
うと訪問したらキチガイ扱いされてしまったらしい。

ウォルター・ブラッテン/ジョン・バーディーン/ウィリアム・ショックレー
トランジスタを発明
「これは通信の新時代の幕開けであり、どれほど途方もないことが待ち受けているのか、想像もつきません」 エレクトロニクスの時代が始まった。トランジスタは IC,LSI に発展。

ロバ―ト・ノート・ノイス  集積回路(IC)を発明
「楽観主義はイノベーションに欠かせない要素だ」 IC 時代の幕開

 

第6章 電子計算機の登場

アラン・マシスン・チュ―リング  コンピューター科学と人工知能の父
「『機械は考えることができるか』という最初の問題自体、議論するに値しないほど無
意味なものになっているだろう」 エニグマ解読は有名。「イミテーション・ゲーム」(2014年公開)はチューリングの伝記映画。

ジョン・フォン・ノイマン  コンピューターの父―基本構造を設計

 「我々が今生きている世の中に責任をもつ必要はない」
ゲーム理論」を発表したのもノイマン。“悪魔の頭脳をもつ男”と言われていたらしい。

ジョン・エッカート/ジョン・モークリー  世界最初のコンピューター「ENIAC」を開発 “1秒で 5000 回の加算”を実現 人手で 7 時間かかっても、ENIAC では 3 秒!

ジョセフ・カール・ロブネット・リックライダー  コンピューターネットワークの生みの親論文「人間とコンピューターの共生」を発表(1960 年) インターネットの重要性を予見

マーティン・クーパー  世界で初めて携帯電話を開発
「ジョエル、私は今、携帯電話からかけているんだよ。本物の携帯電話だよ」

 

第7章 ロケット、原子爆弾
ロバート・ゴダード  近代ロケットの父―世界初、液体燃料ロケット
「何が不可能なのかを言うのは難しい。なぜなら昨日の夢は今日の希望であり、明日の
現実なのだから」 1926 年 3 月、、ガソリンと液体酸素で推進する人類初の液体燃料ロケットの打ち上げに成功。飛行時間 2.5 秒、最高到達高度 12m、到達水平距離 56m、平均時速100km。

ロバート・オッペンハイマー  原子爆弾を開発 「物理学者は罪を知った」
苦渋に満ちた後半生は、核兵器の国際管理を主張
使うことの出来ない兵器を世界に見せて、戦争は無意味である事を示そうと考えてい
オッペンハイマーは、原爆が従来の兵器と同様に使用されてしまったことに絶望。古代インドの聖典の一節「我は死神なり、世界の破壊者なり」を引用し、深い後悔を吐露したと伝えられているそうだ。

 

第8章 日本のものづくり
丹羽保次郎  NE式写真電送装置(ファクシミリ)の発明(1928 年)
「技術者は常に人格の陶冶を必要とする」 特許庁選定の日本十大発明家の 1 人
https://www.jpo.go.jp/introduction/rekishi/10hatsumeika.html

高柳健次郎  世界初の電子式テレビジョンを開発 「テレビの父」
「研究は世の中のため、人の幸せのために」

松下幸之助  パナソニック創業者で経営の神さま

「志のあるところ、老いも若きも道は必ずひらける」

円谷英二  特撮の神さま、円谷プロダクションの創業者
「まず『出来る』って言う。方法はそれから」

本田宗一郎  本田技研工業株式会社の創設者
「仕事の成功のカゲには、研究と努力の過程に 99%の失敗が積み重ねられている」

井深大  ソニー創業者のひとり
「常識と非常識がぶつかったときに、イノベーションが産まれる」

樫尾俊雄  発明家、CASIO創業メンバー
「技術は冒険ではない。必ずできる、という確信です」 生涯で 313 件の特許(共同名
義含む)取得。

 

第9章 人間主役の時代に

フランク・ロイド・ライト  空間の魔術師 「落水荘」が有名
「あなたが本当にそうだと信じることは、常に起こります。そして、信念がそれを起こ
させるのです」

ル・コルビュジエ  機能的なモダニズム建築を提唱 「住宅は住むための機械である」
国立西洋美術館を含む 7 各国 17 物件が世界文化遺産に登録 「小さな家」(レマン湖

ジェームズ・デューイ・ワトソン/フランシス・クリック  DNAの二重らせん構造を発見「真理は美しいだけでなくシンプルでもあるはずだ」 Nature に掲載された論文は僅か 2 頁、900 語ほど。1962 年ノーベル生理学・医学賞受賞。ワトソン 25 歳、クリック 37歳。

アラン・カーティス・ケイ  パソコンの父―パーソナルコンピュータを創出
「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」

スティーブ・ジョブズ  アップル社の創業者 「ハングリーであれ。愚か者であれ」

ビル・ゲイツ  Windows を世界標準に 「現代は最高に生きがいのある時代だ」
「情報をいかに収集、管理、活用するか。あなたが勝つか負けるかはそれで決まるというものだ」

 

第 10 章 地球の環境
ユーリイ・ガガーリン  世界初の有人宇宙飛行に成功
地球は青かった」 人類史上初めて、宇宙を眺望(1961 年)
「この一歩は小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩だ」は月面着陸を成功させ
たアームストロング船長の言葉(1969 年)。

レイチェル・カーソン  環境保護運動のパイオニア
「『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要ではないのです」
沈黙の春』を著し、自然環境の破壊に警鐘を鳴らした

 

 

 

世界を変えた60人の偉人たち 新しい時代を拓いたテクノロジー 編者 東京電機大学

2019年7月15日第版第1刷発行

 

第1章 古代文明 

ピタゴラス 事象を数式で表し、科学技術の礎を築いた 三平方の定理が有名

「万物の根源は数である」

 

アルキメデス アルキメデスの原理、梃子の原理等を発見、アルキメデスの螺旋も有名。

1「あらゆることを発見したと言い張るのに説明を与えない人々は、不可能なことを発見したと主張して恥をかいたことになります」

  2「私に支点を与えよ。そうすれば地球を動かしてみせよう」

 

蔡倫 古代中国の四大発明 ①製紙法 実用的な紙の製紙法を開発

 印刷の始まり ②木版印刷 信仰と深く結びついて、木版印刷が成立

 羅針盤の発明 ③方位磁針 古代中国の科学「風水」から生まれる

 火薬の発明 ④火薬 不老不死の薬探しが発端 兵器に利用され、戦争を変えた

 

第2章 科学革命

レオナルド・ダ・ヴィンチ 目覚ましい才能を発揮した万能の天才

 「知恵は経験の娘である」 比類なき天才が生み出した、無数のもの・・・

 

ヨハネス・グーテンベルク 実用的な活版印刷技術を開発 

印刷による聖書の普及が、宗教改革をもたらす。知識の普及と識字率の向上にも貢献

  過去1000年間で最も重要な出来事のひとつ

 

ガリレオ・ガリレイ 天文学の父―科学革命を代表する人物 

  「人間のどんな議論も明白な経験にもとづかなければならないのです」

  「数学は科学へとつながる鍵とドアである」

  地動説を実証し科学革命を起こした

 

ヤンセン父子 多くの分野の進歩に貢献した、眼鏡職人の親子

  顕微鏡と望遠鏡の発明で、天文学・医学・生物学が飛躍的に発展

 始まりは彼らの発明から・・・

 

アイザック・ニュートン 「万有引力の法則」を発見、近代物理学の創始者

  「神はすべてを数と重さと尺度から創造された」 微分積分、光学、運動三法則も発見

 

第3章 第一次産業革命

ジェームズ・ワット 蒸気機関を改良して産業革命に大きく寄与

  “人類の力を高め、より高い段階へと導いたもっとも輝かしい科学の徒にして世界の恩人” 新たな動力源「蒸気機関」は社会に革新をもたらした

 

ジョージ・スチーブンソン 鉄道の父―鉄道の発展に広く貢献

  「われらの目的は成功することではなく、失敗にたゆまず進むことである」

  世界で初めて客車牽引に成功

 

ロバート・フルトン 蒸気船の実用化 セーヌ川ハドソン川で蒸気船の実験に成功。

  初の潜水艦「ノーチラス号」の建造 画家志望が転じて産業革命の担い手に

 

ベンジャミン・フランクリン 雷が電気であることを実験で証明

  「君の仕事を追いかけよ、仕事に追われるな」 勤勉で自己啓発に務め、公益のために尽くした。米国100ドル紙幣に肖像画

 

アレッサンドロ・ボルタ 電池を発明し、その名が電圧単位の由来に

  電池の発明は「人類発明上最大の驚異」と評された “当たり前”を疑い、実験で確かめた。

  ちなみに乾電池を世界で初めて開発したのは屋井先蔵(1885年)。

 

マイケル・ファラデー 電気学の父―「ファラデーの法則」などを発見

  「さらに試行せよ。何が可能かを知るために」

 数々の発見・発明が電気エネルギーの時代を拓く

 子ども向けクリスマス講演「ロウソクの科学」も有名。  

 

ヴェルナー・フォン・シーメンス 実用的なダイナモ(自励式発電機)の開発に成功

  「アイデアだけなら、ほとんど価値がない。発明における価値は、実際に使えてこそ存在するのだ」 電機・通信の大手多国籍企業シーメンス」の創業者

 

マリー・キュリー 放射線の研究でノーベル賞を2度受賞

  「人はみな、何らかの天分に恵まれているもの」 原子時代の扉を開いた“キュリー夫人

 

アルフレッド・ノーベル ダイナマイトを発明し、ノーベル賞の設立を遺言

  「人類に対して最も偉大なる貢献をなしたる人物に授与するものとする」

  ダイナマイトの発明は工事のためだった

 

第4章 第二次産業革命

カール・フリードリヒ・ベンツ 自動車の生みの親―実用的なガソリン車を発明

  「私が何よりも情熱を注いでいるものは発明である。その情熱は決して冷めることはない」

 

ヘンリー・フォード 自動車の育ての親―大量生産に成功

  「神は弱者の召使ではない。神は全力を出しきった者のために存在するのである」

 

サミュエル・モールス 電信の父―モールス電信機を発明

  「これは紙のなせるわざなり」(旧約聖書の言葉)は1844年5月24日の長距離実験での最初のメッセージ 妻危篤の知らせに早馬で帰宅する者の間に合わなかったことで決意。

 

アレクサンダー・グラハム・ベル 電話を発明、AT&T社の母体を設立

  「偉大な発明や発見は・・・小さいものを観察することから生まれる」

  ヘレン・ケラーサリヴァン女史を紹介。母と妻は聴覚障害。聴覚障碍者のための教育、学校設立、科学教育にも熱意があった。

 

トーマス・アルバ・エジソン 蓄音機、電球、映写機・・・電化の発明王

  「大事なことは、君の頭の中に巣くっている常識という理性を綺麗さっぱり捨てることだ」 小学校を中退したエジソンは12歳頃から働き始め、15歳頃には電信技師となり独学で学ぶ。事業化を前提とした1300件超の発明院と特許は人々の生活を電化生活へと一変。

 

ジョージ・イーストマン ロールフィルムを発明、イーストマン・コダックの創業者

  「あなたはシャッターを押すだけ、あとは当社にお任せください」

  誰でも写真が取れる時代の生みの親

 

ニコラ・テスラ 交流方式、ラジオ、蛍光灯など多数発明

  「発明こそ、人間が持つ創造的な脳による、何より重要な産物なのだ」

  

テスラ(交流派)とエジソン(直流派)の対決「電流戦争」で交流方式が採用され、現在の電力供給方式に至っている。

 

リュミエール兄弟 映画の父―撮影兼映写機、カラー写真を開発 映画上映を世界で初めて実現

 

レオ・ベークランド プラスチックの父―合成樹脂「ベークライト」

  「燃えない。溶けない」 語源はギリシア語のプラスティコス(柔らかく自由に作ることが出来るという意味)

 

グリエルモ・マルコーニ 無線通信を開発し、船舶との通信を実現

  「科学の最も魅力的な側面は、それが人間を夢の追求に駆り立ててくれることだ」

  大西洋を横断するイギリスとカナダ間、3200kmの通信に成功。これにより船舶との連絡が可能となり、無線通信や放送が発展する出発点となった。

偉人たちの挑戦2 物理学編1 東京電機大学編 

2022年3月20日第1版1刷発行

 

ロバート・ボイル 「ボイルの法則」(PV=一定)で知られる近代科学の先駆者   

 (体積Vと圧力Pは反比例)

 「科学者が人類に行った著しい貢献のひとつは、実験し、観察データを集めようと努力したことである」

 

ロバート・フック ニュートンの陰に隠れたもう1人の天才科学者

 「望遠鏡が使用され、顕微鏡が用いられ、目に見える世界が新たに見出され、多様な創造物を見ることができる」

 

アイザック・ニュートン 近代科学の巨人

 「私は仮設を立てません」

 

ベンジャミン・フランクリン 科学者として、また政治家としても活躍した

 「明日なすべきことあらば、今日のうちにせよ」

 アメリカ独立宣言は1776年7月4日、フィラデルフィアから全世界に向けて発表された。原文を書いたのは若きジェファーソン(33歳)、中心人物ジョージ・ワシントンは44歳、フランクリンは既に70歳。「すべての人間は生まれながらにして平等であり、神によって、生命、自由、幸福の権利が与えられていることを、我々は絶対の真理であると信じている」

 

ジェームズ・ワット 蒸気機関の生みの親

葬式について「ショーやパレードなしに、できるだけひそやかに頼む」と遺言

 

ゲオルク・ジーモン・オーム 「オームの法則」(電流の強さは電圧に比例し抵抗に反比例する)を発見した物理学者 今やオームの法則超伝導(電気抵抗がゼロになる現象)技術に活かされている。

 

マイケル・ファラデー 電気学の父

 「私は最後まで、ただのマイケル・ファラデーでいたい」

  自転車の発電機(運動エネルギーから電気を作り出しライトをつけることができる)、

  モーター(電気エネルギーを運動エネルギーに変える)の元になった電磁誘導を発見

(8/29)

 ファラデーは王立研究所の教授になった後も屋根裏部屋の質素な暮らしを続けた。

ケルヴィン卿(ウィリアム・トムソン) 「絶対温度」の研究で知られる

 「科学は、永久に続く慣例となっている法則により、正当に提供されるどの問題に対しても、恐れずに立ち向かう運命にあります」

 10歳でグラスゴー大学に入学し17歳でケンブリッジ大学に入学。22歳でグラスゴー大学教授として迎えられた若き天才。イギリス学術振興協会で酒の醸造業者の発表は周囲から冷ややかに迎えられたがケルビンはその報告からひらめいたものがあり共同研究を始め、遂に絶対温度―273.15℃を絶対零度と定める新しい基準を発表。

 

ジェームズ・クラーク・マクスウェル 電磁気学の分野で、重要な功績を残した

「科学こそ、学問の真実に至る王道である。どこかで間違っても、自然がその誤りを指摘するからだ」

 

ヴィルヘルム・レントゲン X線を発見し医療に偉大な恩恵をもたらした

 「私は考えたのではなく、ひたすら実験を繰り返したのです」

 

J.J.トムソン 電子を発見したイギリスの物理学者

 「大発見というのは終着駅ではない。我々は1つの山の頂上に登るとそこで発見するのは、今まで征服したどの山よりもはるかに高い山が、その先にあるということだ」

トムソンの一番弟子ラザフォードが原子核を中心に電子がまわっているモデルを発見。

 

マックス・プランク 「量子力学」理論の開拓者 

 「各々の科学の主目的はその中に生じるすべての理論を唯一のものに融合させることに存する」

 熱放射の公式(E光のエネルギー=hvプランク定数×振動数)を考案した後、量子化説(動きの中間に無数の値が取れるとするニュートン力学に対し、量子の世界では不連続が値を取り、それは必ず整数となって中間に値は存在しないとした)を導き出した。

 

長岡半太郎 土星型原子モデルの提唱者

 「実験もやり、理論もやり、両方を知っていなければならん。理論のよし悪しは実験によって決する」

 ラザフォードのモデル発表に先立って土星型原子モデルを考えていた日本人。湯川秀樹の育ての親(大阪大学初代総長)。

 

マリー・キュリー ノーベル賞を2度受賞したラジウムの発見者

 「私は、ノーベルとともに、人類は新発見から、悪よりも善を多く得るだろう、と考える者のひとりです」

 夫と二人で、夫の勤務先の学校のボロボロの用具置場を借りて手製の器具で実験を続けて、ポロニウムラジウムを探し当て、3年9カ月かけてラジウムの結晶0.1gを取り出すことに成功。夫とノーベル物理学賞を受賞した後、ノーベル化学賞も受賞する。白血病で66歳の生涯を終える。

 

寺田寅彦 「天災は忘れた頃にやってくる」で知られる物理学者、随筆家

 「好きなもの いちご 珈琲 花 美人 懐手して宇宙見物」

 

リーゼ・マイトナー 「マイトニウム」の語源となった物理学者

 「誰もが若いとき、自分の人生がどうありたいか思い描くでしょう。でも私は次のような結論に達しました。人生が実り豊かなものであるならば、たとえそれが平坦なものでなくても構わないと」

 ウランの核分裂によって生まれる膨大なエネルギーを人類で初めて計算。

 1944年にノーベル賞を受賞したオットー・ハーンと長年にわたって共同研究を続けてきた彼女も受賞しておかしくないくらい研究に没頭した89年の生涯を送った。

 

アルベルト・アインシュタイン 20世紀最大の科学者

 「私たちの作り上げた科学は、まだまだ幼稚で原始的なものと言える。にもかかわらず、科学は私たちのもっているものの中で最も尊いものなのだ」

 もはや説明はいらないだろう。

 

ゲーテ詩集 高橋健二訳

昭和39年1月20日初版発行 昭和63年2月20日33刷発行

 

小 曲

 五月の歌

  ・・

  私はお前を愛する、

  あつい血をたぎらせて。

  お前は私に青春と

  喜びとはずむ心を与えてくれる。

  

  新しい歌と踊りに

  私のこころははずむ。

  いつまでも幸福であれ、

  お前が私を愛する限り!

 

ヴィルヘルウム・マイスターから

 立て琴ひき

  ・・

  いとおしきおとめは独りなりやと、

  恋する人の忍び寄りてうかがうごとく、

  夜となく昼となく、

  苦しみは、独りなるこの身に忍び寄る。

 

詩編

 神 性

  人間は気高くあれ、

  情けぶかくやさしくあれ!

  そのことだけが、

  我らの知っている

  一切のものと

  人間とを区別する。

 

  われら知らずして

  ただほのかに感ずる

  より高きものに幸あれ!

  人間はそのより高きものに似よ、

  人間の実際の振舞いが

  それを信じさせるようであれ。

 

  自然は

  無感覚だ。

  太陽は

  善をも悪をも照らし、

  月と星は

  罪人にもこの上ない善人にも

  同様に光り輝く。

  ・・

  永遠不変の

  大法則に従い、

  われらはみな

  われらの生存の

  環をまっとうしなければならぬ。

 

  ただ人間だけが

  不可能なことをなし得る。

  人間は区別し

  選び、且つ裁く。

  人間は瞬間を

  永遠なものにすることもできる。

 

  人間だけが、

  善人に報い、

  悪人を罰し、

  癒し、救うことができる。

  また、すべての惑いさまよえる者を、

  結びつけ役立たせる。

 

  われらはあがめる、

  不滅なものたちを。

  彼らも人間であって

  最上の人間が小さい形で

  なし、あるいは欲することを

  大きな形でなすかのように。

 

  気高い人間よ、

  情けぶがく、やさしくあれ!

  うまずたゆまず、

  益あるもの、正しきものをつくれ。

  そしてかのほのかに感ぜられた

  より高きもののひな型ともなれ!

 

 警句詩

  『格言的』から

  ・・

  誠実に君の時間を利用せよ!

  何かを理解しようと思ったら、遠くを探すな。

 

  今日と明日の間には

  長い期間が横たわっている。

  君がまだ元気なうちに

  早く処理することを学べ。

 

 『温順なクセーニェン』から

  ・・

  能あるものは、そっと黙っていよ。

  そっとしておいてもおのずから現れてくる。

  どんなに装って見ても、

  結局は、人の問題だ。

 

  恋愛と情熱とは消え去ることがあっても、

  好意は永久に勝利を告げるだろう。

・・

生活をもてあそぶものは、

決して正しいものにはなれない。

自分を命令しないものは、

  いつになっても、しもべにとどまる

  ・・ 

  学問と芸術を持っているものは、

  同時に宗教を持っている。

  学問と芸術を持たぬものは、

  宗教を持て!

  ・・

  勇気を失ったのはーすべてを失ったことだ!

  そのくらいなら、生まれなかった方がいいだろう。

 

ゲーテは、深い。

  

 

時の娘 ジョセフィン・テイ 小泉喜美子訳

1977年6月30日発行 2014年3月25日28刷

 

 本文の冒頭には「真理は時の娘―古い諺―」とある。この言葉に本書のテーマは尽きている。

 裏表紙には「薔薇戦争の昔、王位を奪うためにいたいけな王子を殺害したとして悪名高いリチャード三世―彼は本当に残虐非道を尽くした悪人だったのか? 退屈な入院生活を送るグラント警部は、ふとしたことから手にした肖像画を見て疑問を抱いた。警部はつれずれなるままに歴史書をひもとき、純粋に文献のみならリチャード三世の素顔を推理する。安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場! 探偵小説史上に燦然と輝く歴史ミステリの名作」とある。

ネットで調べてみると、この小説は、英国推理作家協会が1990年に発表した「史上最高の推理小説100冊」の第一位に選ばれたらしい。

 

 グラント警部は人の顔から性格を見抜く能力があった。ある時、マンホールの穴に落ちて怪我をして病院で入院中に暇を持て余したグラント警部は、リチャード3世の肖像画を手にする。王位を手にするために兄とその甥を殺したせむし男の異名を持つリチャード3世。甥をどうやって殺したのか明らかになっていないことを思い出して歴史の本を取り寄せる。グラント警部は、後世になって作成された資料は用いない。当時の資料を用いるのを鉄則としている。なぜなら歴史は勝者が作り変えてしまう危険があるからだ。当時の資料を読むとリチャード3世に対する大逆罪の告発理由に、王子二人が行方不明になった事が入っていない。これは行方不明の事実がないからと考えなければ辻褄が合わない。歴史研究生キャラダインがグラント警部に協力して調査員となり調べ物は彼の役目となる。何を調べたら良いかを考えるのはグラント警部。グラント警部の言葉も振るっている。「問題の要点は、現場に居合わせた一人一人がみんな、この話は作り話だと知っていながら、しかも、それを否定しない、ということだ。今となってはもうとり返しがつかん。この話は嘘だと知っている連中が黙って見ているあいだに、そのまったくの嘘っぱちが伝説になるまでにふくれ上がってしまったんだ」と。キャラダインも「真実というのは、誰かがそれについて説明したもののなかにはまったく含まれていないんです。真実はその時代の些細な物事すべてのなかに含まれているんです。新聞の広告。家屋の売買。指環の値段」とおつなセリフを吐いている。

 そして遂にリチャード3世が甥2人を殺した事実はないことを突き止める。このことをキャラダインは本にしようと決意してグラントの病室が出ていく。ところが少しして意気消沈したキャラダインがグラントの前に現れ、そんなことはとうの昔にハッキリしていて既に他人の手によって明らかにされていた。なのに教科書には誤った記述が繰り返し掲載されていただけだった、と述べる。しかしグラントは励ましてキャラダインに再度決意させる。

 歴史ミステリの名作、と言われるのには訳があった、と得心した次第だ。